1部分:第一章
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側に来て言うのだった。
「誇り高い生き物だ」
「何処がだよ」
彼は父の言葉の意味がわからなかった。理解できなかった。
「いつも群れを見回しているというのに」
「何かを食べるのは生きていて当然のことだ」
しかし父はまた言うのだった。
「羊を狙うのもな」
「それで羊を喰われても天への捧げものっていうんだよな」
「そうだ。一匹や二匹気にするな」
また我が子に告げた。
「そんなことはな。全くな」
「狼の何処がいいんだ」
やはり今も父の言葉がわからなかった。
「一体何処が。あんな生き物の」
青年になっても忌々しい顔で狼を見るだけだった。そうしたある日のこと。彼は父から用事を言われたのだった。それは。
「そこに行けばいいんだな」
「そうだ」
使いに行けということだった。
「そこの家にな。これを届けてくれ」
「クロテンの毛皮じゃないか」
ジャムカは父が出してきたそれを見て思わず声をあげた。それは確かにクロテンの毛皮であった。モンゴルにおいて最も高価とされるものの一つだ。
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