第6章 流されて異界
第130話 赤い瞳
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服装のチョイスは動き易さなどではなく、すべて見た目。
動き易さを重視するのならジャージでも着た方が余程マシです。
今までの敵は、中世ヨーロッパの最新流行レベルの相手。こいつらは俺の美的感覚から言うとサーカスの道化師か、それともアメリカンヒーロー物に出て来る狂気の仮面を被った敵役。こんな連中を相手に見た目の美醜を競っても意味はない。……と言うか、論点が違い過ぎて話しにならない。
しかし、それが今回はいきなりのヒップホップ系。流石に今回に関しては、普段通りのあまり考えていない服装よりは、少し気に掛ける必要があるでしょう。
「これで、あの見た目は蘇芳優。中身はおそらく平安時代の――平将門の配下よりも強そうに見えるやろう?」
昼過ぎ。あの銘文の刻まれていない庚申塚の前で、白昼夢を見た後に合流した神代万結が持って来た情報。
それは――
先ず、彼女が持って来たのは最初の被害者の写真。その写真に写って居たのが、昨夜俺とハルヒが出会った犬神使いだった――と思う。確かに写真に写った人物と、昨夜出会った人物との容姿に関してはまったく同じ。病的なまでに白い肌。線が細い、と表現される顎。肩幅も狭く、身体が全体的に小さく感じられる。
ただ……おどおどとした雰囲気が写真からでも伝わってくる細い目と、昨夜出会った青年の目。何処から出て来るのか分からない根拠のない自信に彩られた……一種、狂信者に近い雰囲気を感じさせる瞳が、まるで別人のような雰囲気を作り出していた。
この瞳は、あの白昼夢の中に登場しただまし討ち、……と思しき状況で殺された侍の瞳と良く似て居たように思う。
確かに、中身が本当にあの白昼夢で見た平将門の残党らしき男性だとは限らない。しかし、俺が件の犬神使いの青年に対して蘇芳優と呼び掛けた際に、まったく反応を示さなかったのは事実。
それに、少なくとも今現在の俺の気を読む能力を、完全に誤魔化す事はかなり難しいので――
可能性としては自分の事を完全に忘れているのか、もしくは姿形は蘇芳優だが、中身……つまり、魂の部分が違うか、のどちらか。
おそらく、魂と魄。それに、霊的な物質で造られた肉体。そのすべてが、それぞれ別の存在から作り出されたモノなのでしょう。
魂の部分は平安時代にだまし討ちの如き状況で殺された人物。
魄の部分は一九九八年に猟奇的な方法で自殺した人物。現実として現れた部分に関しては自殺として処理されて居ますが、これは科学が支配する表面上の世界では自殺としか処理する事が出来なかった事案。魔法と言う、科学では再現出来ない方法が関わって来て居たとすると、別の答えが見付かるかも知れない事件。
このふたりは明らかに人間。どちらも簡単に死亡したようなので、この部分に間違いはないでしょう。まして、少なく
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