第6章 流されて異界
第130話 赤い瞳
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「さつき、無事だと良いのだけど――」
普段は良く晴れた青空に等しい表情の彼女……なのですが、この時はまるで何かが足りないと言いたげな――この場には完全にパーツが揃っていないかのような雰囲気。まるで、隙間から吹き込んで来る風に身を立てて居るかのような表情で小さく呟いた。
そう。確かに、ここには何かが足りなかった。
「まぁ、あいつは殺しても死ぬようなヤツやない、と思う」
せやから、多分、大丈夫やろう。
かなり不安げなハルヒに比べて、お気楽極楽な雰囲気で答える俺。ただ、それまでは確かにハルヒに向けて居た視線をごく自然な雰囲気で外し、何処か遠くを見つめる形に変えた事が……俺の現在の心を口調以上に物語って終ったかも知れない。
相馬さつき。この世界では相馬家……相馬太郎良門に端を発する、と称している旧家の術者。その能力などの詳しい事は分からないが、おそらく現状での弓月さんよりも高い。もしかすると神代万結や有希と互角かも知れない能力を有して居る術者。
少なくとも俺と闘気をぶつけ合って、まったく引けを取らなかったのは間違いない相手でした。
ただ――
昨夜の事件。夜の三時過ぎに行われた犬神の襲撃の際に、有希や万結。そして、俺が施した各種の結界がすべて破壊されたのですが……。
尚、俺の結界は、身内なら自由に越える事が出来る代物。但し、身内以外は絶対に越える事の出来ない仕様。流石に朝には解除する必要はありますが、それでも事件と直接関係のない部外者にウロウロされるよりは、結界内に侵入されない方を選ぶべきだと考えましたから。
それに、そもそも、夜中に若女将の部屋の付近や、少女客しかいない客室の辺りをウロウロする人間の方が不審者だと思いましたしね。
それで、その破壊された結界。俺が施した三つの内、ひとつは確実に内側から呪符を剥がされる形で解除されていました。
そして、後のふたつは燃やされて居たので……。
平安期に関東圏で……帝に弓を引く、と言うレベルの戦の話。この事件に俺たちが関わり始める直前に相馬の姫が消える。その後、術の基本がまったく分かっていない犬神使いが何故か結界の内側に潜り込み、結界を解除して仕舞う。
何となく、この事件のカラクリは見えて来たような気がする。
ただ問題なのは、相手の目的が表面に現われている目的だけなのか、それとも――
太陽に……と言うか、高気圧に愛されまくっていて、常に明るい陽光に包まれたかのような容姿に、今は薄い翳りのような物を纏わせている彼女に視線を移す俺。
俺たちをこの地に招き寄せたのは、表面上は弓月さん。なのですが、これだけの御膳立て……例えば、弓月さんの親戚が事件に巻き込まれている。俺たちに取っては、ハルヒの口から温泉旅行
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