第一部 悪夢 〜東方幻潜場〜
壱章 潜入
1.『スパイ生活』
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…ここは、幻想郷だけど、幻想郷じゃない……。外と幻想郷の境目なのだろう。そしてここは、おそらく幻想郷にとってかなり重要な役割があるようだ。それは……)」
「あら、起きたの……?」
「ぴゃ!?」
いきなり声を掛けられ、声が裏返ってしまった。
「驚かせたかしら……?まぁいいわ、ちょっとまっててね」
霊夢はむくりと起き上がると、くしゃみをしながらどこかへ向かった。霊夢の子供と話すような口調だったことに違和感を覚え、すぐにそれが何故かを理解した。
「(……そうだった。幼い姿の方が警戒されにくいとか言われて、変な術をかけられたんだった)」
自慢だった身長を失った喪失感に苛まれそうになったが、今はそれどころじゃないと首を振った。
「一刻も早く、幻想郷に関してあらゆる情報を送らなきゃ……」
「どうしたの?」
「ぴゃあ!?」
「……私って、怖いかしら」
霊夢が軽くため息をつきながら、少年の瞳をじっと見つめた。
「……なに?」
「……。……いえ、なんでもないわ」
少年にはお見通しであった。
霊夢が少年に対し何らかの違和感を感じたことに。
「(どんな勘してるんだ、この人)」
「ねぇ、君。名前はなんていうの?」
「……若木東」
「東くん。家はどこ?」
「……わかんない」
とりあえず、わからないとだけ言っておく。あながち間違いでもないので、嘘は言っていない。
「そう……。完全な記憶喪失じゃないけれど、さすがにこのまま帰すのは危険よね……」
霊夢は東の髪を優しく撫でながらそう呟くと、とりあえず朝ごはんにしましょと言って立ち上がり、またどこかへ消えた。
「……」
始まったのだ。
悪夢のような、スパイ生活が。
東は意を決したように、ぺちんと軽く頬を叩いた。
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