第十二話「貴公子、暴かれる」
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と机から立ちあがった。
二人は、すぐさま廊下へ出て全速力で寮に戻る。今は放課後、この時間帯は生徒達が部活へ出かけていて寮の人数は指で数えるほどしかいない。
ドンッ……!
「いてっ!」
鈍い音ともに太智は、目の前の巨体にぶつかって跳ね返った。
「大丈夫? 太智君」
「太智? あ、ごめん! 大丈夫か?」
ぶつかった相手は清二だった。そんな彼の周囲には一夏と狼もいた。
「せ、清二か……いや、俺もよそ見してたから」
「そんなに急いでどうしたんですか?」
一夏が呑気な口調で尋ねる。
「そ、そうだ! 弥生はどうした!?」
太智は焦って清二達に聞きだした。
「ああ……寮の部屋で俺たちのRSの調整をしてくれているよ?」
と、俺が答えた。それを聞いて太智は益々焦りだす。そして、彼は次にあの人物の名を尋ねた。
「シャルルは!?」
「シャルル?」
一夏が首を傾げていると、隣に立つ清二は一瞬顔を真っ青にした。そんな彼の表情を、ラルフは見逃すことはなかった。
「ねぇ……清二君、何か隠し事とかしているの?」
と、ラルフは心配な顔をして清二の腕に手を添えた。
「あ、いや……別に?」
「……」
しかし、ラルフは清二の表情に疑問を抱く。
「弥生の部屋って何号室だっけ!?」
太智は、弥生の居場所を聞くと、寮へ向かって走っていった。そんな彼を見て、何かあると察した周囲も、皆が太智に続いて走った。
寮の部屋では、弥生がご機嫌に鼻歌を口ずさんで狼達のRSを整備していた。特に狼が持つ零を大切に両手に持って柔らかく零に微笑みかけた。
「狼君……」
両親の形見を、今では密かに思いを寄せている人に使ってもらっている。あの零を抜いて勇ましく戦う青年の姿は眩しく、彼女は心を奪われる。どうにか親密になりたいと彼に歩み寄ってはいるものの、そんな彼は自分の思いに気付いてくれずに顔を赤くして離れていってしまう……
「狼君……もしかして私のこと、嫌いなの?」
悲しい瞳で、彼女は零を狼に見立てて語りかけた。
「そんな……嫌だよ? だって、私こんなにも狼君のことを……婚約者なんて嫌なのに。でも、そうしないとお姉ちゃんの生活が厳しくなるから、どうしても避けられないんだよね……」
心をズキズキ痛ませる彼女は、語りかけるのをやめて静かに零を机の上に置いて整備の続きをする。
コンコン……
そのとき、誰かがノックをしていた。
「はーい」
悲しい気持ちを強引に振り払い、彼女は無理にでも笑顔をして部屋のドアを開けた。
「僕だよ? 弥生ちゃん」
そこには噂の転校生であるシャルル・デュノアが居た。
「あ……シャルル君ね?」
「入っても……いいかな?」
「ええ、いいですよ? 相方の生徒は部活中ですし」
「じゃあ、お邪魔します!」
部屋に入るシャルルだが、弥生
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