本編
第六話
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てやるよ。但し手加減はしないぞ?」
甲に傷一つない左手をそっと鞘に添え、右手で柄を掴み、少し腰を落としギーシュを見据えるサイトの姿に周囲の者達は圧倒された。空気が変わった、そうはっきりと認識できる程の何かがサイトから感じ取られた。
見物客達はやはり瞬殺でサイトが勝つと確信した。
「俺は剣士だ、身分は平民だそうだ、『青銅』とか『雪風』だとか『微熱』だとか『ゼロ』だとかいう大層な肩書きはねぇよ。ただの剣士、平賀サイトだ。この刀で戦う、お前のほうこそ異論はないな?」
「ない! 先手は貰うぞサイト、行けワルキューレ!」
薔薇の杖を一振りしサイトの一番近くのワルキューレを操り、ギーシュはサイトに切りかかる。人の身程ではないが金属の塊とは思えない程の軽やかな動き方でワルキューレの剣がサイトに振り下ろされる。サイトはそれを避ける素振りすら見せず、刀に手を掛けた体勢のまま、迫り来るワルキューレを見据える。青銅で出来ているワルキューレの剣をまともに受ければ、怪我どころではすまない可能性があったが、サイトもギーシュもそんなことは当然理解していた。
サイトには、その程度の障害は楽に超えることの出来る自信があった。
ギーシュには、サイトがその程度で倒れる筈が無いという信頼があった。
故に、観客達が悲鳴を上げそうになる中であっても二人は冷静に対戦相手だけに集中することが出来た。
観客達の興奮がピークに達し、気の弱い者達が思わず目を瞑った瞬間、サイトが動いた。
そして多くの観客達の目には、サイトが動いたという始点と、サイトの目の前に迫っていたワルキューレが横一文字に裂かれているという結果だけが見えた。
切り裂かれたワルキューレの上半分が持っていた剣は、サイトの持つ刀の鞘によって受け止められており、下半身はゆっくりと倒れる初めていた。そしてサイトの右手は大きく振り抜かれ、その手に持つ刀の波紋が美しく煌めいていた。
サイトの動きを正確に捉えることが出来ていた数少ない人物の中の一人、タバサは思わず息を飲んだ。タバサの目にはサイトが、多くの観客達の胴体視力を越す速さを持って、抜刀し、抜けた刀の勢いに捕らわれることなく、素早く左手で鞘を握りしめ振り下ろさる剣を受け止めた、その一連の流れが確かに映っていた。言葉にすれば、刀を抜き相手を切った、ただそれだけの事であるが、サイトと同じことをしろと言っても、実行出来るものを探すには、国に仕える騎士達を上位の者達から順に探していく必要がある。それだけの技術が今の一刀に詰め込まれているのを、タバサは理解した。
サイトが刀を振るった過程を認識出来ずとも、サイトが刀を振りワルキューレを切り裂いたことは理解出来た観客達は大きく歓声を上げた。戦争にて接近戦を得意とする騎士
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