暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
GGO
〜銃声と硝煙の輪舞〜
Trust me
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
思考した時、少女は砂漠の向こう側から聞こえてくる小さな音を拾った。それはやがて、砂煙を携えてこちらに向かう小さな影となる。

「……車?」

三輪だが、おそらくバギーという踏破力の高い車種のようだ。砂漠のため、派手に後輪から砂塵を弾き飛ばしながらこちらへと向かってくる。

目を凝らすとすぐさま索敵スキルが発動し、視界に必要な明度(ガンマ)と、専用の双眼鏡やスコープには及ばずとも、ある程度までの拡大(ズーム)を行ってくれる。

助手席に座るのは、夜風に揺れるペールブルーの髪を両脇で束ねた少女だった。確か、シノンといったか。

そして、運転するのは――――

バギーはユウキの眼前で止まる。運転していた黒衣のプレイヤーは、スッとこちらを見た。

「よ、お疲れ」

「そっちも」

前時代的な内燃エンジンの音を多少緩め、キリトは言う。

「……《災禍の鎧》か?」

「うん。キリトは《死銃》?」

「あぁ」

深くは訊かない。

ただ、互いの《敵》について、彼らは質問ではなく確認をする。

普通の人が聞けば、その辺の雑踏に転がっている世間話程度の口調で、何の気負いも、背負いもなく、二人は言葉を交わした。

すべてを知るなどという大言壮語は吐かないが、それでも知っているという儚い見栄くらいは張れる。

かつての六王の一角。

片方は長い間末席に居座り、片やもう一方は代理とはいえ第三席に着席した男。

両者の《見栄》は、一般人(シノン)の細い肩を確かに震わせた。

会話はそれだけ。

二人はそれでまた、各々の物語へと戻っていく。

――――その寸前。

「ユウキ」

響くアイドリング。

その中でも、剣士の声は不思議とよく響いた。

「あいつ――――レンのこと、疑うなとは言わない。人間なんてそんなもんだ。いつだってプラスの考えでいられるわけじゃない」

疑うこともある。憎むこともある。道を違えることだってあるかもしれない。

間違えない人間などありはしない。完全に己と同一の主義主張を持つ者など存在しないのだから。

でも。

だけど。

それでも。

「お前自身はどうなんだ。許せるか?許容できるか?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「――――――ッッ!!」

弾かれたように、少女は振り返る。

激昂する眼を受け止める少年の双瞳は、湖面のように静かな闇をたたえていた。

「あいつが助けて守って一緒に戦うお前を、他でもないお前が貶めるのか?」

あく
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ