6.姉ちゃんは魅力的
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た。
「タイミング!! 姉ちゃんタイミング考えてッ?!!」
「へ? なにが?」
「いやなんでもないッ! 分かった!! 分かったからッ!!」
「? 変だねぇシュウくん」
誰のせいだと思ってるんだ誰のッ!! 比叡さんがちゃんとTシャツ着てれば、僕のもこんなに荒ぶることはなかったんだよッ!!
「困ってることあったら言ってね! お姉ちゃんも手伝うから!!」
「結構です!! つーかそんなこと言っちゃダメッ! 手伝っちゃダメ!!」
「そっか〜……しょぼーん……」
でも、比叡さんが言ってることは半分当たっている。最近の僕は、妙に比叡さんのことが気になりだしている。気が付くと目で追い、色々な表情を見る度に目が釘付けになっていく。比叡さんは本当に表情豊かで、目で追う度に新たな表情を見せてくれている気がする。
そしてある日のことだった。その日は夏の暑さが落ち着いて、秋口らしい涼しさで過ごしやすい一日だった。僕は学校の授業が終わったあと、用事で久々に吹奏楽部に顔を出し、家路についたのは周囲が暗くなってからだった。そして、あの小さな神社に差し掛かった時だった。
「あれ……姉ちゃん……」
神社には申し訳程度の街灯が立っており、その街灯にうっすら照らされる形で、比叡さんが立っていた。僕が立っている場所からだと、ちょうど比叡さんの横顔が見えた。あの、いつもうちのベランダで背中越しに感じた、儚い美しさを感じさせる横顔だった。
そして、街灯の薄明かりに照らされ神社の闇に浮かび上がる比叡さんの姿は、息を呑む美しさだった。ここが初めて出会った神社だというのも関係しているのかもしれないが、神社で立ち尽くし、夜空を見上げる比叡さんの横顔は、今まで見たことがないほど神秘的だった。今まで見たどの顔よりも感情が読めず、今まで見たどの顔よりも儚げで、それでいて、今まで見たどの顔よりも美しい横顔だった。僕はその脆さと美しさに、しばらくの間声をかけることが出来ず、ただただその横顔に心を奪われた。
「……ぁあ、シュウくん」
どれだけの間、比叡さんの横顔を眺めていたのか、僕にはさっぱりわからない。比叡さんに声をかけられるまでの間、僕はただずっと比叡さんの横顔を眺めていたのだから。
「や、やあ姉ちゃん」
「おかえり」
「うん。姉ちゃんもバイトお疲れ」
「うん。……帰ろっか!」
「うん」
先ほどのガラスのような繊細な美しさを称えた比叡さんは、もういなくなっていた。今目の前にいるのは、いつものお日様のような比叡さんだ。
「姉ちゃん」
「ん? なーに?」
「神社で何やってたの?」
比叡さんは少し考えた後、いつもより少し控えめな笑顔を僕に向けた。心なしか、その顔とさっきの横顔が、僕には重なって見えた。
「
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