5.姉ちゃんは年上
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て金剛お姉様に元気付けられてきたんだ。だから今は、私がシュウくんを元気づけようと思って」
「はは……大丈夫だよ比叡さん。思ったほどショックはないから」
喉の奥がキューッと締り、心臓を誰かに掴まれているような感触が胸に走った。いけない。ショックなんて受けてないはずなのに。落ち込んでなんかいないのに……悔しくなんかなかったはずなのに。
比叡さんは両手に力を入れて、僕を更に力強く抱きしめてくれた。いけない。それ以上されたら。
「お姉ちゃんには嘘つかなくていいよ」
「ウソじゃないよ」
「ウソだよ。だってシュウくんの顔、泣いてたもん。涙が出てないだけで、ずっと泣いてたもん」
喉の奥が締まり続ける。あまりの痛みで目に涙が溜まってきた。やめて比叡さん。それ以上言わないで。
「大丈夫だよ。 思ったほどショックも受けなかったし、全然悔しくなんか……」
不意に、比叡さんが右手で僕の頭を撫でた。その温かい右手で優しく、でも不器用な比叡さんらしく少しだけ乱暴にクシャッと僕の頭を撫でた。右手の温かさが心地よくて、髪の毛をクシャッとされる感触がとても優しい。
「お疲れ様。今までよくがんばったね」
その瞬間、僕の喉の痛みが最高潮に達した。決壊したかのように、涙が目から溢れてきて、鼻から鼻水まで出てきた。
「あぁあ……ぁぁぁぁああああ……比叡さん……ぁぁあああ……」
締まりきって声なんか出ないはずの喉から、情けない声が自然と出てきた。どうやら僕は、自分自身にウソをついて平静を装っていたようだった。そんなことに僕自身、今更気づいた。
比叡さんは、僕が自分自身にもウソをついていたことに気付いていたんだ。だからこうやって、僕の部屋に来て、僕を抱きしめてくれたんだ。
「悔しい……悔しいよ……ずっとがんばったのに……」
「そうだね」
「金賞欲しかったよぉ……最後に県大会行きたかったよぉお……」
「行きたかったね」
「今日で最後なのに……もう来年なんてないのに……がんばったのに……」
「がんばったね。シュウくん、ほんとに今までよくがんばったね」
比叡さんは、更に僕を強く抱きしめて、頭を何度もなでてくれた。その心地よさと身体を締め付ける痛みが、僕の胸にとても心地よくて、僕は自分が心から安心していくのを感じた。
「泣いてもいいよ。お姉ちゃん、ずっとこうしててあげるから」
この言葉を合図に、僕は子供のように情けない声を上げて泣いた。比叡さんに見られることもいとわず、涙をボロボロと流し、鼻水が出て、言葉にならない赤ちゃんのような声を出して、僕は泣いた。
「うあああああぁぁぁぁ……比叡さん……ありがとう……悔しいよぉ……」
「うん」
「ありがとう比叡さん……ありがとぉ……」
「いいんだ
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