5.姉ちゃんは年上
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まーす……』という比叡さんの声とともにドアが開く音が聞こえ、比叡さんが部屋に入ってくる足音が聞こえてきた。
「何か用?」
一応、比叡さんにそう聞いてみた。でも比叡さんは何も答えず、ベッドに乗ってきて、僕と背中合わせに座った。僕の背中に、比叡さんのぬくもりが伝わってきた。
「シュウくん今日はお疲れ様」
「うん」
「カッコ良かったよ。演奏も気合入ってた」
「うん。ありがとう」
父さんもそう言ってくれたし、比叡さんもそう言ってくれたのなら、僕の二年間のがんばりは無駄ではなかったのかな……?
「……でも結果は、残念だったけどね」
震え始めた喉の奥底から、僕は声を振り絞ってそう言った。そう。結果は去年と同じく銀賞だった。確かにレベルアップはしていたけど、金賞の壁は思った以上に分厚くて、今の僕らではそれを突破することは出来なかった。
―神楽中学校吹奏楽部、銀賞
このアナウンスをされた時、実は僕は、思ったほどショックを受けなかった。最初の感想が『そっか……ダメだったか……』だった。僕の横では、演奏前の僕を気遣ってくれた秦野が悔しそうに泣いてたけど、僕自身は思ったほどのショックを受けることがなかったのは意外だった。
『先輩……』
『ん?』
『来年は絶対に金を獲りますから……先輩たちの悔しさの分まで、頑張って獲りますから……!』
『うん。頼むよ』
秦野とそう約束はしたが、正直なところ、悔しさというか、そういう感情の変化はなかった。自分でも不思議に思ったんだけど、酷くフラットな感覚で、秦野との約束を受け取った。
「でもさ。不思議と悔しいとか、悲しいとかそういう気持ちが沸かないんだよ。なんでかなぁ……やりきったからかなぁ……」
比叡さんの背中が僕の背中から離れた。比叡さんのぬくもりが背中に感じられなくなったことに少々寂しさを感じていると、次の瞬間、比叡さんは僕を背中からふわっと、本当にふわっと、優しく包み込んで抱きしめてくれた。
「ちょ……比叡さん?」
あまりに突然のことで僕は狼狽えたけど、僕を優しく包み込んでくれる比叡さんのぬくもりはとても優しくて、とても暖かく心地いい。
「……私ね、金剛お姉様っていう姉がいるの」
「うん」
「私たち、いつもシンカイセイカンと戦ってたんだけど、自分のせいで仲間が大怪我しちゃったり、ちょっとしたミスが大失敗になっちゃって、それを悔やんで落ち込む子がやっぱりいるの」
「……」
「でもお姉様は、そうやって落ち込んでる子や元気がない子を見かけると、いつもこうやって元気付けるの。“大丈夫デース。アナタの頑張りはみんな知ってマース”って」
「……? なんで英語訛り?」
「イギリス生まれの帰国子女だから。……んで私もね。落ち込んだ時は、こうやっ
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