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逆さの砂時計
Cantabile
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さえいれば可能だろうが。
 では、今の今まで自分の意思でこの異空間に留まっていたというのか!?

「うそ……! だって貴方、その姿では……本当の姿では、一度も私の前に現れなかったじゃない!」
「お前を覚醒に導くだけなら、お前が継いだ俺の力があれば十分だからな」
「……え?」

 アリアの震えが止まる。
 代わりに表出したのは、戸惑い。
 何を言われたのか解らないと、眉を寄せる。

「私が継いだ、貴方の力?」

 レゾネクトの特性は、『 』。
 本質を知っていても、彼女は自分にもそれがあるとは気付かなかった。
 自覚する前に、レゾネクトがアリアから切り離していたから。
 私達が知っているレゾネクトは、アリアが生まれ持っていた『 』の力を顕現させ、ここに居るレゾネクト本人が操っていたものだったんだ。

「なに? どういうこと、なの?」

 レゾネクトは、うろたえるアリアに、ふわりと優しく。
 本当に優しく、微笑む。
 嘘も邪心も何も無い、優しい優しい微笑みと共に語られた真実が。
 アリアから一瞬にして体温を奪い去った。

「俺はお前が完全なる女神として覚醒する時を待ち続けてきたんだ。可愛い俺の小鳥。俺の血と力を分けた俺の娘、アリア」
「────────っ!?」
「アリア!?」
「アリア様!!」

 ざあっ! と、音が聞こえそうな勢いで引く血の気。
 そのまま凍るんじゃないかと思うほど、生気を失ってしまった。

「うそ」
「偽りなど、お前には一切告げていない。その必要もない」
「嘘よっ!! 私に両親なんていない! 皆、殺されてしまったんだもの! 私には、母親も父親もいない!!」
「お前を産んだ者なら、ここに居る」

 レゾネクトの右腕が すぅっと横に開いて。
 そこに突然、気を失っているらしい女性が現れた。
 レゾネクトの本体と同じくらいに長い白金色の髪。
 陽光を忘れたかのような白い肌。
 少し傷んだ簡素なローブ。
 成熟した美しい女性の背中には、翼こそ無いが。

 あの、庇護欲をそそる儚げな顔立ちは、まさか、マリアさんの本体?
 生かされていたのか!?

「俺達の娘アリア。お前が望むなら世界でもクロスツェルでもベゼドラでも望むまま好きにすれば良かったんだ。お前には、その資格があるのだから。俺の邪魔さえしなければ手助けこそしても奪ったり壊したりはしなかった。お前が勝手に勘違いして警戒し、手放して、狂わせただけ。……ずいぶんと面白い一人芝居だったがな?」
「れ、ぞ……」

 愕然とレゾネクトを見つめて固まるアリアは……無言で泣き出した。
 瞬きも忘れて零す涙に。
 マリアさんの本体を抱えたレゾネクトは、殊更優しく微笑んでみせる。

「アリアを、どうするつも
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