Cantabile
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「偽りなど告げてはいない。必要も無い」
「嘘! 嘘ッ!! 私に両親はいない! 皆、殺されてしまったんだもの! 私には、母親も父親もいない!!」
「お前を産んだ者なら、此処に居る」
レゾネクトの右手が すぅっと横に開かれて。其処に突然、気を失ってる女性が現れた。
長い白金の髪、白い肌、少し傷んだ簡素なローブ。
成熟した美しい女性の体には翼こそ無いが……まさか、マリアさんの本体? 生かされていたのか!?
「俺達の娘アリア。お前が望むなら望むまま、世界でもクロスツェルでもベゼドラでも好きにすれば良かったんだ。お前にはその資格があるのだから。俺の邪魔さえしなければ、手助けこそしても奪ったり壊したりはしなかった。お前が勝手に警戒し、手放して狂わせただけ。……随分面白い一人芝居だったがな?」
「れ、ぞ……」
愕然とレゾネクトを見つめて固まるアリアは……無言で泣き出した。瞬きも忘れて零す涙に、マリアさん本体を抱えたレゾネクトは殊更優しく微笑む。
「アリアをどうするつもりで契約したのですか、貴方は」
レゾネクトの目的は異空間を出る事じゃなかった。世界を壊す意図も無い。
なら、何故アリアと契約した? 何故、女神アリアの覚醒に此処まで拘ったんだ?
娘への愛情とは思えないし、本体のマリアさんも殺してなかった。階段の人達……マリアさんのかつての仲間・コーネリアさんとウェルスさん、アルフリードさんも、生きてるみたいに体を保ってる。
何もかもが異常だ。総てがおかしい。
私達はまだ、レゾネクトの何かを見誤ってる。
「……死んだ者は決して生き返らない。死は生の結果であり、死をどれだけ映そうが時間を戻そうが、生に返る事は無い。それによって得られる物こそ「あれ」が見付けた答えだった」
「!?」
寄り掛かっていたマリアさん本体をその場に寝かせ、消える。間を置かずに現れた先は……階段の上。
「万霊の言を用いても外形を作るだけ。マリアとバルハンベルシュティトナバールが力と記憶を形にしただけの人形であるように、命を蘇らせる事はできない。だが……生前の記憶と新しい肉体と生命力があれば、限り無く蘇生に近い状態で呼び戻す事はできる」
「!! まさか……!」
玉座の手摺に浅く腰掛け、薄緑色の光を弾く短い金の髪を指先に絡めて。レゾネクトは高らかに……歌うように、悪夢の声を上げる。
「最期の最後まで己の信念を貫き通した、弱く強く、全世界で最も美しい魂を持っていた勇者。俺に手を伸ばした気高い彼に、もう一度……会う」
レゾネクトの狙いは、勇者アルフリードの復活!?
しかも、アリアを必要とする新しい肉体と生命力って……!
「俺が持つ内なる記憶と世界中に散っていた外側の記憶、神々に与えられていた祝福……漸く総ての条件が揃った
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