Cantabile
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と切って捨てるには少々惜しいがな。……こうして判りやすく並べても、最たる愚はやはりお前だ。アリア」
「!?」
澄んだ紫色の目がゆらりと振り返る。剣を交えたレゾネクトよりも少し大人びた印象の顔が、冗談を含ませない無表情で、自分の契約者を莫迦にしてる。
彼は一体、何を……
「俺が一時的に放置していた頃、お前は泉へ逃げた。何故だ?」
「……貴方が……私の世界を壊す、から」
「……アリア?」
容姿や表情に変化は無い。だが、支えてる人物が発した口調はロザリアさんの物と全然違う。
「それが愚かだと言うんだ」
体を此方に向け、レゾネクトは無表情のまま腕を組んで彼女を見下ろした。
「最初に告げただろう。俺の望みはお前自身。お前が持つ、お前の総てだと」
「……だから私は、私の世界を……」
「お前があの世界をどう解釈し、どう扱おうが自由だ。俺が欲しいのはお前であって、お前の世界ではない。そういう契約を交わしたんだがな?」
「!!」
レゾネクトを捉えた薄緑色の目が大きく開かれる。指先が小刻みに震え……
「世界を壊す気は、最初から……」
「無い。そのつもりがあるなら、お前と契約した時、俺がこの空間を出る切っ掛けを得た瞬間にそうしている」
「なっ……!」
レゾネクト本体は、アリアと契約した瞬間から既に開放状態だった!?
確かに『』の力なら可能かも知れないが……では、今の今まで自分の意思でこの異空間に留まっていたと!?
「……うそ……! だって貴方、その姿では一度も私の前に現れなかったじゃない!」
「必要無い。お前を覚醒に導くだけなら、お前が継いだ俺の力があれば十分だったからな」
「……え?」
彼女の震えが止まる。代わりに顕れたのは、戸惑い。何を言われたのか解らないと眉を寄せる。
「私が継いだ、貴方の力? 何? どういう事?」
……レゾネクトの力は『』の力。本質を知っていても、彼女は自分にそれが有るとは気付かなかった。自覚する前にレゾネクトが契約者から切り離していたから。
あのレゾネクトは、アリアが持つ『』の力を顕現させ、このレゾネクトが操っていた物だったんだ。
魔王の力はとっくに解放されていた……!
レゾネクトは彼女にふわりと優しく。本当に優しく微笑む。嘘も邪心も何も無い、優しい優しい微笑みと語られた真実が。
彼女から一瞬にして体温を奪い去った。
「俺はお前が完全なる天属の女神として覚醒する時を、ずっとずっと待ち続けて来たんだ。可愛い俺の小鳥。俺の血と力を分けた、俺の娘 アリア」
「ーーーーッ!?」
「アリア!?」
「アリア様!?」
ざぁっと音が聞こえそうな勢いで引く顔色。そのまま凍るんじゃないかと思うほど、生気を失ってしまった。
「う、そ」
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