Cantabile
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ない。
もしやここは、玉座の間、か?
遥か昔、神々に選ばれた勇者と仲間が殺されマリアさんが閉じた異空間。
だとしたら、玉座と下方に座っている彼らは……
私達は、どうしてここに?
ロザリアさんの意識が、自分で自分の体を跳ばしたのか。
それとも、レゾネクトがアリアを呼び寄せた?
「時司の神バルハンベルシュティトナバールとマリアは同じ。言葉を弄して相手を動かそうなど実に浅はか。ただただ忌まわしく煩わしいだけだ」
「……ベゼ、ド……ラ」
「! ロザリアさん?」
目を覚ましたロザリアさんの手が、私の腕に弱々しく重なる。
ゆっくり上げた顔を覗くが。
うっすら開いた視界はまだぼやけているのか、焦点が定まってない。
「ロザリア様」
一緒に跳んできたリースさんも、心配そうにロザリアさんを見つめる。
「ウェルスとコーネリアはあまりに未熟だった。クロスツェルとベゼドラは俺の物を盗ろうと画策する執拗なだけの弱者。面白さを考慮すればどちらも単純に愚か者と切って捨てるには少々惜しいがな……こうして分かりやすく並べても、最たる愚はやはりお前だ。アリア」
「!?」
澄んだ紫色の虹彩がゆらりと振り返る。
剣を交えたレゾネクトよりも幾分か大人びた印象の顔立ちが。
冗談を含ませない無表情で、自分の契約者をバカにしている。
彼はいったい、何を?
「俺が一時的に放置していた頃、お前は『水鏡の泉』へ逃げた。何故だ?」
「……貴方が……私の世界を、壊す、から」
「……『アリア』?」
すぐ近くで聴こえた声に違和感を覚える。
容姿や表情に変化はない。
だが。
私が支えている人物が発した口調は、ロザリアさんのものとは全然違う。
「それが愚かだと言うんだ」
レゾネクトは体の正面をこちらへ向け。
無表情のまま腕を組んで、彼女を見下ろした。
「最初に告げた筈だ。俺の望みはお前自身。お前が持つお前のすべてだと」
「……だから私は、私の世界を……」
「あの世界をどう解釈し、どう扱おうが、それはお前の自由だ。俺はそれに介入するつもりなどない。俺が望んでいたのは生来の力を含めたお前の存在そのものであって、お前の世界ではない。そういう契約だったんだがな?」
「!!」
レゾネクトを捉えた薄い緑色の目が、大きく開かれた。
指先が小刻みに震えている。
「じゃあ、あの世界を壊す気は……最初から……」
「ない。そのつもりがあるなら、お前と契約した時に、俺がこの空間を出るきっかけを得た瞬間に、そうしている」
「なっ……!」
レゾネクトの本体は、アリアと契約した瞬間から既に開放状態だった!?
確かに、彼の特性なら、アリアと繋がって
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