Cantabile
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息詰まる静寂が、私達を迎え入れた。
風が吹かない。
水も流れない。
土の匂いもしない。
肌を刺す冷気が、薄い緑色に照らし出された広い空間を支配してる。
ここは、どこ?
閃光を浴びたせいで眩んだ視界が、徐々に落ち着いて。
「…………っ!!」
私の手前に横たわっているロザリアさんを、慌てて抱き起こし。
数十歩先、赤い絨毯の中央に立つ、見慣れない後ろ姿の男性から庇う。
首から下の全身を覆う、真っ黒な長衣。
高い背丈でも床に引きずる長さの金髪。
背中を向けられているせいで顔は見えてないが、全身に感じるこの圧力。
私達が知るレゾネクトのものとよく似ているが、明らかに桁が違う。
これが、レゾネクトの本体?
「……彼女が再びここへ来た後。アリアが泉で眠りに就いて以降、ずっと。俺は一人であの世界を見てきた。何が起きても起きなくても、干渉はせず、必要な物を探しながらずっと見ていた。俺が出した結論は、世界の美しさに反した愚か者ばかりが揃っている、だ」
……なんだ? 顔を上げ、両腕を広げて、突然何を……
「……………………っ!?」
「神々は、自らの種族を高く位置付け、他の生命を導く名目で、ちっぽけな尊厳を堅持しようとしていた。『あれ』が愛していた生命の循環は、誰かの意図を中心に据えて回す物ではないというのに。『傲慢』を罪とするなら、奴ら以上に罪深い存在も無いだろう。それに続く者達も大差ない」
あれは、なに?
「悪魔共は欲求にのみ従順で、時に賢く時に無能。己の力量もわきまえず、手当たり次第に噛みつく愚鈍さは、まあ、暇潰しには丁度良い見世物だが、度が過ぎると醜悪だ。とても知性を持ち合わせた生命体とは思えん」
レゾネクトが顔を向ける先。
高い階段とその頂上に、複数の人影。
「人間はどちらでもあり、どちらでもない、まさに狭間。神を真似て何かを構築しては、悪魔の如く簡単に蹴潰し棄てて忘れ去る。個々が熱意と飽厭と諦めで閉じた精神世界にあって抱いた願望すら短い一生の内に貫けもせず、外側からの介入を望み続け。そのくせ、他者との間に優劣をつけたがっては一方的な優越感に浸る。……欺瞞と虚飾と依存に満ちた人間世界は、どこへ転がって行くのだろうな? いっそ楽しみではある」
階段の下方では、一組の若い男女が肩を寄せ合って座り。
中段では、寝返りをうっているような姿勢でベゼドラさんが横たわる。
一番上の段には、クロスツェルさんの体が仰向けで寝かされ。
彼らを見下ろす玉座には、幼さを残した顔立ちの男性が。
玉座の隣にある妃席には、ティーを膝に乗せたマリアさんが座ってる。
全員眠っているのか、気を失っているのか。
一人として動く気配が
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