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伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚
第十二話(中) 王国の終焉
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用意した急場の病院である。
 また、戦闘には参与しない前提で衛生科配属の自衛隊員が巡回しており怪我人がいないか常に巡回している。

「貴方。医務の方が……じきにここへ来られるはずです。ですから……私のことは」
「レッド君! 君は何をしているんだ!」

 近くで戦っていたワタルがレッドを物凄い剣幕で見咎めた。

「何って、エリカを外の野戦病院まで連れていこうかと……」
「何を言っているんだ! ここには直に衛生兵がやってくる! 君は君自身のやるべきことをしなければダメじゃないか!」
「それはそうですけど、エリカがこうして倒れているのをほっとけというんですか!」

 ワタルはエリカを一瞥して、一度目をそらし、強く瞑ったのち絞り出したような声で返す。

「そうだよ! いいかいレッド君! これは戦争なんだ! ポケモンを指揮する君がいなくなってはやがて統制を失っていかに精強な君の手持ちも……」
「じゃあワタルさんに指揮を頼みますっ! かわりにどうかお願いしますね!」

 そういってレッドは出しているポケモンのモンスターボールを渡し、脱兎の勢いでその場を走り去る。

「あ! おいっ! はぁ……。仕方のない子だなぁ……」

 ワタルは観念した風にレッドとエリカの手持ちたちの指揮を引き継ぐ。

―午後3時40分 エンジュシティ 南方―

 第三軍配属のミカンはあまり先頭にでたがらないため後方でポケモンたちの指揮をとっていた。
 エリカ同様、疲れが顔に出始めたその頃、遠目にエリカをおぶって走り抜けていくレッドを見た。

「あれ……レッドさん?」

 ミカンは思わず、レッドを見ていた。

―同じころ―

 レッドはエリカをおぶって野戦病院へと走っていた。

「貴方……」

 レッドにおぶられている彼女は申し訳なさそうな声で話す。

「なんだよエリカ。病院ならもうすぐだぞ」
「指揮を放棄してまで、私を病院に連れてくださるのは本当にありがたいですが……本当に宜しいのですか?」
「いい、いいんだ。お前の事が気にかかったままだと戦いに集中できないしな。それに……」
「それに?」

 レッドは少しずつ目深に帽子を被って、

「ほ、他でもないお前の体……俺以外におぶってもらいたくないんだよ」

 彼女はそれに何も答えなかった。代わりに彼は自身の首筋が少しだけ暖まったように感じる。
 すると、その刹那。二人の前に白衣を着た一人の老人が立ち塞がった。

「ホッホッホ……仲睦まじいのう……。レッド君」

 聞き覚えのある声、レッドは立ち止まってまじまじと顔を見る。

「オーキド博士……!」

 レッドは戦地にいる博士を見て漸く心の底からすべての首謀はオーキドだったんだと深く自覚した。
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