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伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚
第十二話(中) 王国の終焉
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かない」

 今日の昼、治安出動が不承認になったとはいえまたいつ同様の決議がおこるのか分からない。そして次決議が行われれば承認が下って自衛隊が介入する蓋然性は非常に高いと言わざるを得ない。
 今回ワタルがエンジュを攻撃する意思を表明したことによって治安出動及びそれに関する決議はひとまず先送りにされたが、あと少し彼の行動が遅れていれば採決が再び行われていた可能性すらある。
 彼女自身そのことはよく理解していた。少し黙した後にこう尋ねる。

「ワタルさん。今回のエンジュ攻めによって文化財すべてが焼損するという事態になったらどうなさるおつもりですか? 失われた歴史は二度と戻ってはこないのですよ?」
「そうなって責任が追及されたら僕のクビ一つで済ませるさ。君たちに火の粉が降りかかるような立ち居振る舞いはしないよ」

 ワタルは自らのクビに手をあててみせる。

「それで済むとはとても思えないのですが……」
「心配無用。大義はこっちにあるんだ。この地にいるロケット団さえ叩き潰せれば問題はあるまいよ。ま、次の理事長選挙じゃ敗戦確実だろうけどね」

 ワタルは力なさげに高笑いしてみせる。

「そこまでのお覚悟があるのでしたらもう何も申し上げることはありませんわ。それでは、失礼いたしました」

 彼女は深々と頭をさげてこの場を後にした。
 作戦の概要は第二軍合同ということになっているため翌日に回されている。
 ワタルはエリカが立ち去った後、緊張の糸が切れたのか否かどっかりと椅子に座る。

「ハァ……。怖かった……。それでも怒っている彼女も可愛かったなぁ……」

 などと呟きながらワタルは机に伏して仮眠をとった。彼は昨日から一切寝ていない。

―レッドとエリカのテント―

「お帰り。どこ行ってんだ」

 彼女はつくや否やすぐさまワタルの元まで飛んで行っていた。
 レッドは手持ちの世話をしている。

「ええ、あまりにも浅慮な判断だと思いましたから直談判を……」
「お前あんとき滅茶苦茶ショックうけてたもんな……」

 エンジュ攻撃に伴う動員の電話がかかってきた際、彼女は強く衝撃を受けてその場にへたりこんだほどである。
 42番道路について漸く活力を取り戻し、怒りとなって飛び込んでいった次第だ。

「ワタルさんもそれなりにお考えがあっての行動という事は分かりましたが、それでもやはり心情としてはやりきれませんわ……」

 彼女自身エンジュへの攻撃の正当性は理解こそしているのだろうが、やはり胸中で燻る物があるのだろう。不興顔である。

「難しいことはよくわからないけど……。とにかくこうなった以上、俺らがやれることはできる限り民家や建物が壊れたり、傷ついたりしないように出来るだけのフォローをすることじゃな
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