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三十五歳独身が
第五章

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「私おばさんだから」
「いいです」
「それはどうしてなの?」
「宮村さんならと思いまして」
「私なら?」
「はい、そうです」
「私ならってどういうことなの?」
 首を傾げさせて考える顔になってだ、祐加奈は村瀬に尋ね返した。
「一体」
「はい、僕が宮村さんを好きだからですよ」
「えっ!?」
「だから好きだからですよ」
 何でもないといった態度だがにこりと笑ってだ、村瀬は祐加奈にまた言った。
「宮村さんが」
「好きってまさか」
「はい、だからデート申し込んでるんですが」
「あの、確か貴方」
 村瀬の言葉を受けてだ、祐加奈は。
 その顔を瞬時に、沸騰する位に赤くしてだった。村瀬に返した。
「二十七よね」
「はい、そうです」
「私三十五よ」
「年上ですね」
「八歳も年上なのよ、おばさんよ」
 必死になっての言葉だった。
「もうアラフォーで」
「それがどうかしたんですか?」
「そんなおばさんにどうして声かけるのよ」
「だから好きだからですよ」 
 祐加奈の顔を見てにこりと笑っての言葉だった。
「それが理由じゃ駄目ですか?」
「駄目も何も」
 あたふたとしてだ、祐加奈は村瀬に答えた。
「いきなりそんなこと言われても」
「本当は試合の後で言うつもりでしたけれど」
「その後で」
「はい、告白ということで」
「どっちにしても言うつもりだったのね」
「駄目ですか、僕だと」
「それはその」
 そう言われるとだ、祐加奈も。
 村瀬のことは嫌いではない、それでだ。
 断る理由もなくてだ、こう彼に答えた。
「そんなことはないから」
「じゃあ付き合ってくれます?」
「今日から」
「はい、サッカーの試合を観てから」
 一緒にだ。
「そうしましょう」
「ううん、それじゃあ」
 何とか顔の色を元に戻してだ、そして。
 こうだ、村瀬に答えた。
「今日から」
「宜しくお願いします」
 にこりと笑ってだ、村瀬は祐加奈の言葉を受けた。そうしてだった。
 祐加奈は村瀬と付き合いはじめた、いきなりはじまったこの交際を。
 喫茶店で皆でコーヒーを注文した後友人達に話すとだ、皆満面の笑顔で彼女に言った。
「よかったじゃない」
「素直におめでとうよ」
「これで祐加奈もね」
「結婚?」
「見えてきたわね」
「ううん、いい子でね」
 祐加奈は困った感じの顔で友人達に答えた。
「紳士で優しくて」
「つまり申し分ない」
「交際相手として最高ってことね」
「旦那様としても」
「そうなのね」
「けれど八歳も下よ」
 このことをだ、皆に言うのだった。
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