第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十四 〜復活、青竜刀〜
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珍しく、彩が泥酔しているようだ。
飛燕との再会で、酒が進んだのであろうが……。
「そもそも、殿も悪いのですぞ。その気がないのなら、はっきりと拒絶すべきです」
「そこまで節操なしのつもりはないのだが」
「いえ、十分過ぎる程殿は甘い。いいえ、甘過ぎます」
ずい、と彩が身を乗り出した。
酒香を多分に含んだ吐息が、熱を帯びている。
他の者も、何事かと此方を見ているようだ。
「彩、失礼」
と、飛燕が声をかけた刹那。
彩が卓上に突っ伏した。
……手刀を首筋に浴びせたか。
一歩誤れば危険な行為らしいが、何の躊躇いも見せぬとは、な。
「全く、彩がここまで酔うとは」
「手慣れたものだな」
「ふふ、長い付き合いですから。部屋に運んでしまいましょう、どちらでしょうか?」
「仮にもお前は客人、そのような事はせずとも良い」
「そうですよ。ご主人様、お任せ下さい」
愛紗がやって来て、彩を背負った。
「大丈夫か?」
「お気遣いなく。鍛錬でご覧いただいた通り、もう痛みもありませんから」
「そうか」
「……ですから、そ、その……」
と、顔を赤らめながら上目遣いで私を見る。
「いいだろう」
「ありがとうございます。では、連れて参ります」
足取りも軽く、愛紗は立ち去る。
あの様子では、本復と見て良いな。
「本当に慕われているのですね、歳三様は」
「運が良かったのであろうな。私一人では、今こうして生きながらえている事は能わぬであろう」
「運も実力のうちと申します。運が良いだけでは、人はついて行きませんよ?」
「……そんなものか。それよりも飛燕、農業について知りたくば、明日愛里に申すが良い。私から話しておこう」
「ありがとうございます」
「睡蓮があの調子では、お前に言っておいた方が確かであろう」
「はは、そうですね」
陽気な酒だ、悪い訳ではないが……些か、羽目を外し過ぎではある。
尤も、咎めたところで改まるとも思わぬが。
……と、睡蓮と視線が合った。
が、睡蓮は不敵に笑みを浮かべると、再び酒杯を傾けた。
「どうやら、孫堅さんは他にも何か狙いがありそうですねー」
「ただ、少なくとも歳三様に不利益をもたらす事でないのだけは確かですね」
酔った風情もない軍師二人が、私の両側に腰掛けた。
「ほう。何故わかる?」
「まず、孫堅殿はそのような腹芸を得意とされる方ではありません。無論、強かな面もありますが」
「見方によっては、ああして騒ぐ事で耳目を集めて、注意を逸らすという場合もあり得ますがねー」
「……お前達。私が微塵もその可能性を考えていない事を承知の上で話しているな?」
「当然です。その程度弁えられずに、歳三様の軍師は務まりませんから」
「勿論、お兄さんが風や疾風ちゃんの手配り
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