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呼んで欲しくない者 
第五章
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「ニートは駄目だが適当に働いていればいい」
「じゃあ僕魔界ではサラリーマンになるから」
「適当にしろ、とにかく契約を結ぶぞ」
「それじゃあね」
「うむ、早くしろ」 
 実に嫌いやな態度でだ、アスモデウスは郁夫と契約を結んで黒スーツのダンディな中年男の姿になったが郁夫にその姿を笑われた。
「古い格好だね」
「何処がだ」
「だってタキシードにシルクハットって」
 それに蝶ネクタイに口髭だ、それがというのだ。
「手品師?」
「余の好きな格好だが」
「大公さん趣味が古いね」
「駄目だというのか」
「もっと現代チックな服したら?」
「文句の多い奴だ、しかしだ」
 契約相手の言葉ならとだ、やはり嫌々応えたアスモデウスだった。
 サラリーマンの様な服になってだ、郁夫にあらためて言った。
「変えたぞ」
「お疲れ様」
「これ位何でもない、では早速願いを適えてやる」 
 仕事自体は彼にとっては瞬きをする位のものだった、一瞬で終わった。だが。
 仕事を終えて魔界の己の宮殿に帰ってからだ、彼は家臣達に不満をぶつけた。
「相変わらず面白くとも何ともない」
「そうしたお仕事でしたか」
「今回も」
「供物はこれだ」
 そのスーパーの鳥の胸肉を手に出してみせてみた。
「後で適当に料理してくれ」
「ではオリーブで焼きますか」
「カレーでもオープンで焼いてもいい」
「それでは」
「他にはスナック菓子に安物のワインだ」
 アスモデウスはこうしたものも話に出した。
「そしてだ」
「魂ですね」
「それも貰うことになりましたね」
「何でもこちらでサラリーマンをしたいらしい」
 実に面白くなさそうに言った言葉だった。
「職はそれにしておけ」
「では」
「そちらも」
「日本人相手の仕事はだ」
 非常位、という言葉だった。
「面白くない」
「下らない供物にですね」
「我々のことがわかっているので恐れもしない」
「魔界に入っても悪いとも思わない」
「契約を結んでも」
「恐れない、悪と認識しない相手との契約はだ」
 悪魔としては、というのだ。
「何も面白くない」
「魂を手に入れてもですね」
「領民を」
「達成感も何もない」
 それこそというのだ。
「仕事をしただけだ」
「魂を得た」
「それだけですね」
「そうだ、全く以て下らない時代になった」
 実際に極めて面白くなさそうな言葉だった。
「悪魔にとってはな」
「ですね、張り合いがないです」
「認められつつというのは」
「悪が悪と思われない時代」
「そうした世の中は」
「正義は一つではなく悪魔にも正義がある」
 アスモデウスは難しいものになっている顔をさらに難しくさせて述べた。
「そのことは事実だが」
「それを認められるとです」
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