第三章
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木久蔵は賊達の骸に瞑目してから場を後にした。そうして幾十度ものこうした刀を抜く時を経てようやくだった。
東のベールの領地に着いた、そして彼の宮殿の前まで来た。
宮殿はとてつもなく巨大で壮麗だ、黒と紫で彩られ無数の蛍で照らされている。
その宮殿の前に来るとだ、門番達に問われた。
「待て、何奴だ」
「この宮殿に何の用があって来た」
「ベール殿に会いに来た」
堂々とだ、木久蔵は門番達に答えた。
「ベール殿の剣術を見に」
「何、ベール様のか」
「剣術を見たいというのか」
「それで宮殿に来たのか」
「そうだというのか」
「左様、お通し頂けるか」
門番達にこうも言った。
「これより」
「そう言われてもだ」
「ここに御主の様な者が来るとは聞いておらぬ」
「それではベール様の御前にお通しなぞ出来ぬ」
「ベール様はお忙しい方なのだ」
門番達は顔を顰めさせて言った。
「今は魔界の元老会議に出席されておられる」
「魔神の中でも高位の方々とな」
「だからだ」
「どちらにしても今はお会い出来ぬ」
「ベール様には我々からお伝えしておく」
「暫く待っておれ」
「暫くでござるか」
そう聞いてだ、こう言った木久蔵だった。
「というとどれ位でござろうか」
「一月位か」
「それ位かかるか」
「まあその間はだ」
「待っていてもらう」
「わかったでござる」
木久蔵は門番達の言葉を聞いて頷いた。
「ではその辺りに野宿して待たせてもらうでござる」
「部屋位は用意するが」
「宮殿の外になるが」
「別に野宿なぞしなくても」
「それ位は我等が手配するが」
「いや、ご厚意は無用」
木久蔵はこのことは門番達にはっきりと答えた。
「それがしは野宿で充分でござる」
「そう言うのか」
「御主は」
「ここに来るまでも野宿は常でござった」
そうだったというのだ。
「だからでござる」
「野宿に慣れていると」
「そう言うのか」
「そのうえで待たせてもらうでござる」
こうしてだった、木久蔵はベールを野宿して待った。彼は宮殿の周りの雨露が凌げる場所で何日か過ごした。その間剣術の修行は欠かさなかった。
そしてだ、毎日宮殿の門に来てベールは戻ったか聞いてだ。そして。
ベールが戻ったと言われた日にだ、門番達に言った。
「では、でござる」
「うむ、ベール様にお会いしてだな」
「剣術を教えてもらいたい」
「前から言っていた通りだな」
「そうしたいのだな」
「手続きは済んでいるでござろうか」
門番達にこのことも問うた。
「既に」
「うむ、我等から執事殿にお話して」
「そしてベール様からお許しを得ている」
「会って頂けるとのことだ」
「そしてだ」
「剣術を、でござるな」
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