第二章
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「あまりよくはない」
「露骨だからですか」
「露骨にやれば相手も気付く」
流石にというのだ。
「そしてまた言い出す」
「だからそうした露骨なやり方はですか」
「しない」
「どちらも」
「ここは一つ目立たないやり方でいこう」
大統領は己の席に座ったまま補佐官ににやりと笑って言った。
「それも蜂の一刺しだ」
「蜂の、ですか」
「ただしその蜂はスズメバチだ」
「あの蠍よりも強力な毒を持つ」
「その蜂だ」
「一刺しでもですね」
補佐官は笑みを浮かべる大統領に確かな声で問うた。
「相手は」
「それだ、だからな」
「その目立たない一刺しで」
「あの国は何も言えなくなる」
「ではそれでいきますか」
「そうしよう、私に任せてくれ」
「それでは」
こうしてだった、大統領自らその国に仕掛けることにした。補佐官とのその話から数日後の定例記者会見の時にだ。
普通にだ、記者の一人が大統領に問うた。
「隣国との関係がこじれていますが」
「はい、そうですね」
「修復に向けての努力は」
「我が国はしています」
大統領はお決まりの言葉で記者に答えた。
「今現在も。対話の扉はいつも開いています」
「だからですね」
「あちらからお話をして頂ければ」
その時はというのだ。
「何時でもです」
「会談もですね」
「出来ます」
「そうですか」
「はい、ただ」
「ただ?」
「どうも最近です」
ここで大統領は微妙な顔を『作って』言った。
「寛解が冷え込んでいるのは事実、ですから」
「ですからとは」
「この状況が進めば」
何も考えていない振りをしてだ、大統領はこの言葉を出した。
「通貨を保障できないですね」
「通貨をですか」
「安くなるか高くなるか」
どの国の通貨は言うまでもなかった。
「経済的にも冷え込み過ぎると」
「あの、大統領それは」
「そのご発言は」
「あの、つまり」
「通貨をとは」
「何か」
言ってから何も気付いていないふりを続け述べた。
「ありますか」
「それは」
「何といいますか」
「ただ、今のご発言はオフレコではないですよね」
「それでは」
「今はオフレコだったのですか」
とぼけた振りをする演技もした。
「違ったのでは」
「はい、そうです」
「そのことは確かにです」
「オフレコではありません」
「普通の会見です」
「そうですね、では問題ありませんね」
大統領はしれっと言った、だが。
この会見は生中継だった、それでその瞬間に発言が全世界に知れ渡り。
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