第三章
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「殿はです」
「御仏はじゃな」
「特にどの御仏も崇めてはおられませぬが」
「織田家は元々は神職の家じゃしな」
「そのこともあるでしょうし」
「それで寺となると」
「ある方の菩提を弔うものじゃが」
こう言ってだ、家臣達にこうも言った。
「御主達はこの寺の名を見たか」
「あっ、そういえば」
「見たことは見たのですが」
「ですが」
「よく見ておりませぬ」
「では去る時に見よう」
家臣達の不覚だったがだ、蒲生は彼等を責めはしなかった。まずは参拝を終えてそうしてというのだ。
「その時にな」
「申し訳ありませぬ」
「不覚を取りました」
「よい、わしも言っておらなかったしな」
その名についてはというのだ。
「では後で見ようぞ」
「さすれば」
家臣達も応えてだ、そのうえでだった。
主従はまずは寺を参拝した。そのうえで。
寺を去る時に寺のその札を見た、するとその寺は。
「政秀寺ですか」
「つまりですか」
「平手殿ですか」
「殿の傅役であられた」
「織田家家臣の最も上の座は空けられておる」
家臣達と共にその名を見つつだ、蒲生は彼等に話した。
「それは何故かというとな」
「平手殿の座」
「だからですか」
「あえてその座をですか」
「殿は空けておられるのですか」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「殿はご自身を育て守ってくれた平手殿を忘れておられぬ」
「ご自害為されましたが」
「それでもですな」
「こうして菩提を弔われ」
「座もですか」
「平手殿の場とされておるのじゃ」
そうしているというのだ。
「あえてな」
「そうなのですか」
「それが殿のお気遣い」
「そうなのですな」
「あの方はよく傲慢だの血を好むだの言われる」
それが世間の信長の評判だ、とかく苛烈で容赦がなく他人への気遣いなぞ全くしない者だと言われている。
だがその実はどうか、彼は自身の家臣達に話すのだ。
「しかし実はな」
「そういうことですな」
「実は違う」
「人のことをですな」
「わかっておられて」
「気を遣われる方ですな」
「そうじゃ、殿はな」
それが信長だというのだ。
「御主達にもそのことがわかったな」
「はい、よく」
「我等もわかりました」
「そして何故殿が尾張に来られたのかも」
「我等に見せて頂いたのですな」
「わしも見たかったからな」
蒲生自身もというのだ。
「この目でな」
「そういうことですか」
「それであえてですか」
「ここまで来られ」
「確かめられましたか」
「やはり殿は見事な方じゃ」
信長、彼の主はというのだ。
「わしはあの方に誠心誠意お仕えするぞ」
「では我等も」
「共に」
蒲生の家臣達も応える、蒲生に続いて。彼等
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