4.姉ちゃんはヒーロー
[8/8]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
ふ〜……いけませんお姉様……お姉様には司令という方が……ジュルリ……」
何やら危険な香りが漂う夢を見ているようだ。僕は何も聞かなかったと自分に言い聞かせてティッシュを一枚取り、比叡さんのヨダレを吹いてあげた。
「シュウくん……」
不意に比叡さんの口から僕の名前が出てきたことで、僕は心臓が飛び出るかと思うほどにびっくりした。ヨダレを拭いてるとこなんて比叡さんに見られたら……
「お姉ちゃんに……まっかせてぇ……ドュフフフフ……」
夢の中でまで、僕にお姉ちゃんと呼ばせたいのか……
「シュウくん……見ちゃ……らめぇ〜……」
僕に見せられない行為って、一体何やってるんだ比叡さん……。これ以上は理性的な意味で色々とマズいと判断した僕はさっさと比叡さんのヨダレを拭いてあげ、居間から出ていくことにした。
比叡さん、今日は慣れないことの連続で結構疲れていたのだろう。その日は夕飯まで起きることはなかった。夕飯の時間近くになると自然と起きだして、盛大に腹の虫を鳴らしていた。
――へ? 別に夢なんて見てないよ? ぁあ、私お姉様が一人いて、妹が二人いるの。
これは昼寝中にどんな夢を見たのかという質問に対する、晩ごはん中の比叡さんの答えだ。恐らくウソではないだろう。というか覚えてないのだろう。4人姉妹の次女というのが驚きだ。この天真爛漫さは絶対に末っ子だと思っていた。
というか、あれだけ物騒な寝言を言っておいてそんな答えはないだろう……比叡さんのお腹を見てしまったのも手伝って、今晩は悶々とした夜を過ごすことになりそうだ……。
「もっしゃもっしゃ……何か困ってるの? お姉ちゃんが手伝おっか?」
「結構です!! つーか手伝っちゃダメッ!!!」
「そっか〜……しょぼーん……」
後日。これからもテレタビーズのスラッガーとして活躍しつづけるであろう比叡さんに対し、僕は一本の金属バットをプレゼントした。
「ありがとう! お姉ちゃん!! 大切にするね!!!」
比叡さんはそう言いながら、その金属バットにマジックで『ひえい』と名前を書いていた。確かに大切にしようという本人の心意気は伝わってきたが、最初の試合が終わった時には、すでに随所がベコンベコンにへこみまくっていた。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ