4.姉ちゃんはヒーロー
[3/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ボトルを僕の首の後ろ側にピタッとくっつけてきた。突然の氷点下の衝撃に僕は肩を一気にすくめ、深刻な眼差しで秦野の方を向く。
「秦野」
「はい」
「お前、僕が首弱いの知ってるよね」
「知ってます」
「じゃあなんでわざわざ首にペットボトル当てるの?」
「いや、暑いから冷たくて気持ちいいかなーと」
「分かった。気持ちはうれしい。だからペットどけてくれる?」
「嫌です」
「……お前、僕のこと先輩だと思ってないよね」
「ハッハッハッ」
「無表情で笑うのはやめなさい」
後輩からの文字通り冷たい仕打ちに耐えつつ、僕は来るべきファンファーレの瞬間に備える。てか秦野。いい加減ペットボトル離しなさいよ。
一番打者はフォアボールで出塁したものの、二番打者と三番打者は空振りの三振。どうやらチョモランマーズの投手は立ち上がりこそ遅いものの、制球、スピードの両方を兼ね備えた素晴らしい選手のようで、おかげさまで我々吹奏楽部のヒットの時のファンファーレはまだ出番がない。果たして、我らがテレタビーズはこのチャンスをものに出来るのか……僕はいつヒットが来てもいいように、トロンボーンをそれらしくスチャッと構えた。
『四番〜。サード〜……』
試合が始まった時にびっくりしたのは、キチンと選手の名前が放送でコールされることだ。たかが草野球にここまで気合を入れてやるとは思わなかった。
『ひえい〜。ひえい〜。背番号18〜』
「気合! 入れて!! 打ちます!!!」
このアナウンスが聞こえた瞬間、僕は『バファッ』という変な音を出してしまった。慌ててバッターボックスを見ると、テレタビーズのユニフォームに身を包んだ比叡さんが、『フッ! フッ!!』と言いながらバットを素振りしていた。金属バットとは思えないスピードだ……。
「比叡さん?!!」
「あ! シュウくーん!!」
ここからバッターボックスまではけっこう距離が離れているというのに、比叡さんはこっちに気付いて大きく手を振ってくれた。他の部員からの『何あの人橋立くんの知り合いなの?』『か、カワイイ……』『このリア充め……』という視線が痛い。心持ち秦野の目線もなんか痛い……
「比叡さん何やってるの?!!」
僕は思わずマウスピースから口を離し、そう叫んでしまった。
「私! がんばるから!! 見ててねシュウくん!!!」
遠目からでも分かる。テレタビーズのユニフォームに身を包んだ比叡さんは、いつもの空手の『押忍』のようなポーズで、バックに戦艦と万国旗のイメージを映しながら、僕に向かってそう叫んだ。
比叡さんは僕に声をかけた後、真剣な面持ちでバッターボックスに立った。正直に言うと、僕には比叡さんが活躍するとはどうしても思えなかった。あれだけのドジをやらか
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ