第六章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後
「占いは道標なので」
「カードの結果はですね」
「どう注意するのかなので」
「そうしたんです、ですから」
「告白してですね」
「上手くいきました、有り難うございます」
客は彼のアドバイスに従って告白が成功したことを感謝して喜んでいた、このこと自体はいいことだった。
だが自由は閉店してからいつもの居酒屋で飲みつつだ、雄馬に言った。
「よかったよ」
「占いが外れて」
「やっと外れたよ」
自分の占いが、というのだ。
「本当によかったよ」
「それは何よりですね」
「まあお客さんは俺のアドバイス通りにいったと思ってくれててな」
「占いが外れたことはですね」
「気付いてないな」
「そのこともよかったよ、ただな」
「占いは、ですね」
「外れたよ」
このこと自体をだ、自由は地元である名古屋の地酒を飲みつつ言った。雄馬も同じものを一緒に飲んでいる。
そしてだ、肴の烏賊のゲソ焼きも食べつつ言ったのだった。
「本当によかったよ」
「そのことが」
「俺としてはな」
「悪い結果は、ですよね」
「外れて欲しくて仕方がなくて」
「今回やっとですね」
「外れたよ、いつも外れると困るけれどな」
そうなれば占い師として商売としては困る、だがそれでもというのだ。
「ほっとしてるよ、今回は」
「それは何よりですね」
「これからもたまにな」
「外れて欲しいですね、悪い結果は」
「全くだよ、じゃあ今日はな」
「そのことを祝って」
「飲もうな、とことんな」
こう言ってだ、実際にだった。
自由はさらに飲んだ、そして雄馬も。占って悪い結果が出たがそれが外れたことが嬉しくてだ。だがそれはこの時だけで。
彼は次の日だ、仕事をはじめる前にスポーツ新聞を読んで雄馬に憮然とした顔でこう言った。
「昨日の中日の試合のことも占ったんだがな」
「負けって出たんですね」
「トランプでな、全部のカードが悪くてな」
「結果は、ですね」
「最悪の中の最悪って出たんだけれどな」
「昨日の試合二十点差負けでしたね」
「こっちはエラー出まくってな」
そして投手陣は大炎上してだ。
「最悪の負けだったな」
「そうでしたね」
「当たったよ、占い」
「悪い結果が」
「ったくよ、今回も外れて欲しかったけれどな」
「そうはいきませんでしたね」
「この通りな、今年の中日の結果も占ったけれどな」
その結果はというと。
「アウトだったよ」
「その結果も外れて欲しいですね」
「本当にな」
スポーツ新聞を読みながらの言葉だ、名古屋の新聞なので中日に好意的であるがその文章は悲嘆に満ちていた。それを読む彼の顔もそうなっていた。自分の占いの結果についても思いながら。
外れない占い 完
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ