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白い虎
5部分:第五章
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第五章

「その白い虎を撃つか」
「見事な毛皮が手に入りますね」
「ああ、そうだな」
 虎はその毛皮もまた有名である。美しいとだ。高値で取引もされる。マドールもそのことはよく知っているのだ。それでなのだった。
 ただ、だ。彼はここでこうも言った。
「毛皮には興味がないがな」
「あくまで狩りだけですか」
「そうだ、それだけだ」
 毛皮には興味がないというのだ。興味があるのは狩りだけだった。
 そしてだ。池の方を見る。するとだ。
 そこに来た。遂にだ。
 白い大きな虎がだ。のっそりといった感じで出て来た。マドールはその虎を見た。
 見てだ。そうしてだ。
 狙おうとする。ライフルを構える。
 照準の中に虎の姿が入る。そこからも虎を見る。その姿は。
 見事なまでの、芸術品とさえ思える美しさだった。その美しさを見てだ。
 彼は動きを止めてしまった。引き金にかけていた指が動かなくなった。
 引こうとする。だがどうしてもだ。指が動かない。そして遂にはだ。
 照準を外した。そうしてしまった。
 ガイドはそれを見てだ。驚いてこう彼に言った。
「あの、一体どうしたんですか?」
「駄目だ、あれは」
「駄目とは?」
「狙えない」
 こうガイドに言うのだった。
「あの虎はとても」
「また何故ですか、それは」
「見事過ぎる」
 だからだというのだ。
「あまりにもな。奇麗だ」
「確かに見事な毛並みですね」
「あそこまで奇麗だと撃てはしない」
 そしてだ。マドールはこうも言った。
「撃ってはいけない」
「そこまでの虎ですか」
「そう思う。撃てない」
 また話す彼だった。
「あの虎は撃ってはいけない」
「撃ってはいけませんか」
「人がどうこうするには見事過ぎる」
 マドールの言葉は続く。虎を褒める言葉だった。
「だからだ。撃たないでおこう」
「そうされますか」
「そうする。それではな」
「帰りますね、今から」
「そうだ、帰ろう」
 穏やかな声になっていた。自然にだ。
「ここから去ろう」
「わかりました。それでは」
「しかしな」
「しかし?」
「こんなことははじめてだ」
 聞けばだ。マドールの言葉は呆然となっていた。自然とそうなってしまっていた。
「撃てなかったのはな」
「それだけの虎でしたか」
「美しいものを汚してはいけない。そんな考えを俺が持つなんてな」
 苦笑いさえ浮かべていた。そうなってしまっていた。
「不思議なものだな」
「誰だってそうした考えは持ってますよ」 
 ガイドは笑顔で彼にこう話した。
「やっぱりね」
「持ってるか」
「はい、持ってます。ただそれに気付かないだけで」
「そういうものか」
「当然旦那もですね。持ってますから」
「だから俺は撃た
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