第一章
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外れない占い
少し幅のある顎の先が尖った細面にやや吊り形の目、眉は適度な濃さだ。唇は小さめでありいつも微笑んでいる。
髪の毛は後ろや左右や短くしていて上の部分を伸ばして七三に分けている。藤村自由は名古屋の街角で占い師をしている。
その占いはトランプやタロット、コインをその都度使うものであり当たると定評だった、それで店は繁盛していた。
客はひきも切らず弟子である松本雄馬もいつも忙しかった、だが。
ある日自由はその雄馬にだ、困った顔で仕事の後彼と一緒に居酒屋でビールを飲みながらこんなことを言った。
「外れないかな、たまには」
「占いがですか?」
雄馬はそのはっきりとした目を彼に向けて問うた。眉は短いが太く濃く三角形をしている。髪の毛は茶色にしていて上の部分を伸ばしている。わりかし目立つ外見であり高校を卒業してから自由に弟子入りして給料を貰いつつ働いている。優秀な助手であり自由も大事にしている。
その彼がだ、自由にこう問うたのだ。
「先生の」
「そうなんだよ、俺のな」
自由は実際にこう雄馬に答えた。
「そう思ってるんだよ、最近」
「いや、占いは当たらないと」
「意味がないっていうんだな」
「そうですよね」
「それはその通りだよ」
名古屋の鶏を使った手羽先を焼いたものを食べつつだ、自由はまた答えた。二人で居酒屋のカウンターに並んで座って同じものを飲み食いしつつのやり取りだ。
「当たらないとさ」
「そもそも商売にならないですよね」
「そうだよ、けれどな」
「けれどですか」
「占いってのはあれだろ」
ここでまたビールを飲んだ自由だった。
「いい結果と悪い結果があるだろ」
「はい、どうしても」
「タロットでもトランプでもな」
「タロットだと逆になったらまずいですよね」
「塔だとどっちでも駄目だよ」
その為塔はタロットの中で最悪のカードとされている、その示すものも他のカードの悪い場合よりもさらに悪い。
「そうだろ」
「その塔が出てもですか」
「外れないんだよ」
自由の占いはというのだ。
「それが嫌なんだよ」
「悪い結果が出てもですね」
「それが外れないなんて嫌だろ」
「確かに。言われてみれば」
雄馬もそう言われると頷いた。
「そうですね、悪い結果は」
「あまり当たって欲しくないよ」
「特にお客さんの大事なことならですね」
「そうだよ、まあ占いはその結果を見てその人がどうするかだからな」
つまり道標だというのだ、その人の。
「悪い結果が出てもその結果が意味することに注意してな」
「そうならない様に行くべきですね」
「いい結果でもな、それに従って」
悪い結果が出た時と逆にだ。
「悪い様にならない為のものだからな」
「
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