圏内事件 ー捜査ー
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……?」
「…………はぁ」
目を大きく見開いて停止するヨルコさんをよそに、毎度同じのリアクションにゲンナリとため息を吐く。それに呼応する様に頭の上の耳も垂れ下がったのがわかった。
「ほ、ホントにお耳があるんですね」
「・・・・・」
アスナへと向けていた羨望の眼差しとは違う、好奇心を多分に含んだ興味の視線が向けられまたしても気分が重くなる。
ヨルコさんの好奇心の標的となっているのが、自分の頭上に生えている先がギザギザとし、銀色の毛に覆われた犬系の耳。そして、上着の隙間からチラチラと覗く見ただけでわかるフサフサとした同色の尻尾。
おそらく、アインクラッドにいるプレイヤー多しと言えども動物の耳と尻尾を生やしているのは自分くらいだろう。もっとも好きで生やしているわけでもないのだが。
そして先ほどからヨルコさんの行動が不審だ。チラチラと視線を彷徨わせ、手が忙しくなく動いている。ついに我慢の限界がきたのだろう。
ヨルコさんが恐る恐ると言った風に尋ねてくる。
「あ、あの……その触ってもいいですか?」
「ヤダ」
「え!即答??」
返答のあまりにもの速さにヨルコさんが目を剥いて驚く。
とりあえず、耳と尻尾はいろんな意味で弱いので、ホントに勘弁してほしい。
◆◇◆
脱線し過ぎた話が止まって微妙な空気感になってしまったところをアスナがわざとらしく咳払いをして意識を切り替えさせると、ようやく本題を切り出した。
「ところで、ヨルコさん。《グリムロック》と《シュミット》っていう名前に覚えはある?」
「はい……。知って、ます」
二人の名前を出した瞬間、ヨルコさんは肩を小さく跳ねさせた。そして、こくりと小さく、けれどハッキリと首を縦に振り、肯定を示した。ヨルコさんは言いずらそうにしながらもポツリポツリと彼らとの関係を喋り始めた。
「二人は、……同じギルドの仲間でした。ギルドって言ってもその日の食費や宿泊費を稼いだり、安全な狩場で適度に狩りを楽しんだりしているだけの中小ギルドなんですけどね……」
ヨルコさん曰く、所属していたギルドネームは『黄金林檎』。リーダーが『グリセルダ』という女性のプレイヤーで、『グリムロック』は現実のグリセルダさんの夫であり、ギルドの副リーダーだったらしい。
「シュミットが……??」
「え?あいつ、昔中層プレイヤーだったのか??」
「ちょっと!失礼だよ!…………私も今知ったけど」
今は聖龍連合でリーダー格をやっているシュミットだが、意外な過去に驚くと即座にアスナから叱責が飛んでくる。もっともそういう彼女も寝耳に水だったらしいが。
三人のやりとりにヨルコさんは小さく笑った。
「私もですよ。皆さんから
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