暁 〜小説投稿サイト〜
花祭り
第五章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「見られたら本当に忘れられないですよ」
「ううん、それは一体」
「何でしょうか」
「見られた時のお楽しみです」
 ガイドはにこりと笑って答えた。
「その時にです」
「あっ、そこでそう仰るんですか」
「そんな風に」
「そこではっきりと言わずに」
「後回しですか」
「見られるかどうかまだわかりませんし」
 それにというのだ。
「口では中々説明出来ないものですから」
「だからですか」
「それでなんですね」
「その時にお話します」
 それが出た時にというのだ、そして。
 ガイドは二人にだ、ワインですっかり赤くなった顔で言った。
「踊られますか?」
「この村の踊りを」
「それをですか」
「はい、踊られている人もいますし」
 見ればツアー客の中にはそうした人もいる。
「ですから」
「そうですね、それは」
「かなり飲んでますし」
「ちょっとこれは」
「止めます」
「今は観るだけにします」
「足元が少し、ですから」
 ふらふらしているからというのだ。
「このまま食べさせてもらいます」
「それで飲みます」
 トマトやジャガイモ、唐辛子をふんだんに使った料理をというのだ。見れば肉もそうしたものの中にある。
「ですから今は」
「ここにいます」
「そうですか、ならそちらを楽しまれて下さい」
 ガイドの返事は陽気なものだった。
「私もそうします」
「お酒を飲まれてですね」
「食べものも食べて」
「タンゴなら踊れますが」
 アルゼンチンのそれはというのだ。
「この国の踊りは好きですが」
「実際に踊るにはですか」
「ガイドさんは」
「苦手なので」
 それでというのだ。
「見させてもらうだけです」
「では一緒にですね」
「楽しみますね」
「そうします」
 こう三人で話しながらだった、ファナもルチアーナも祭りを楽しんでいた。祭りは次第に盛り上がっていってだった。
 花、村中の花がだった。
 食事や酒にも入ってだ、それに。
 村人達が踊っている若い男女にもかけていった、赤や白に黄色の花びら達がだ。
 宙を舞っていた、それを見て。
 ファナは思わずだ、こんなことを言った。
「何かね」
「そうよね」
 ルチアーナも応える。
「お祭りがね」
「次第によね」
「現実のものじゃなくなっている様な」
「そんな感じよね」
「こんなお祭りってね」
「あるのね」
 信じられないといった顔での言葉だった。
「これがペルーのお祭り?」
「インカ帝国の」
「あの国のお祭りなのね」
「そうなのね」
「そうなんです、いいですよね」
「キリスト教のお祭りじゃないんじゃ」
 ファナが言った、最初に。
「これって」
「そうよね、カトリックのお祭りじゃね」
「ないわよね」

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ