3部分:第三章
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第三章
「そうしたものだからな」
「成程、狩りそのものですね」
「そういうことだな。俺は結局今もスナイパーということだ」
「ハンターではなくですね」
「そうですか」
こうした話もするのだった。そしてそれからもだった。
彼は狩りを続けた。ガイドも共にいる。暫くはこれといった獣を狩ることはできなかった。食糧として小さな獣を手に入れるだけだった。
その中でだ。鰐を撃ってそれを食べている時にだ。ガイドがこんな話をしてきた。
「この森にはですね」
「まだ多くの獣がいるな」
「はい、特にです」
ガイドが炙った鰐肉を食べながらマドールに話す。
「虎です」
「虎か」
「一匹凄い虎がいます」
こう話すのだった。
「この森の主ともいう虎でして」
「そこまで凄い虎なのか」
「もう何年生きているかわかりません」
まずはその歳から話す。
「とにかく。古い虎でして」
「老虎か」
「しかも大きいです」
虎は大きい。実はライオンよりもまだ大きいのだ。その大きさもありだ。虎は非常に強いのだ。だからこそハンターからも狙われるのだ。見事な毛以外の理由もある。
「色は白です」
「白虎か」
「そうした虎です」
「凄い虎なのはわかるな」
それは察するというのである。
「それならだ」
「狙われますか」
「そこまでの虎がいるのならだ」
彼は言った。はっきりとだ。
「狙いそうしてだ」
「仕留めずにはいられませんか」
「スナイパーとしてな」
最早だ。ハンターではなくなっていた。己をスナイパーと言うのだった。
「絶対にだ」
「わかりました。それではですね」
「その白虎がいる場所に案内してくれ」
早速であった。ガイドに対して言う。
「今からな」
「ええ。それじゃあ」
こうして彼はガイドに案内されジャングルの中を進みその白虎がいる場所に向かう。しかしそこは。
ジャングルの中を中に、中にと進んでいく。深い密林の中をかき分けてだ。その中でだ。彼は前を進むガイドに尋ねたのだった。
「聞いていいか」
「何ですか?」
「その虎はこんな深い場所にいるのか」
「はい、そうなんです」
まさにそうだというのである。
「このジャングルの一番深い場所にいます」
「そこがそいつの縄張りか」
「人にとっては聖域と呼んでますね」
「聖域か」
「はい、まさにそれだと」
「神か何かか」
マドールは聖域と聞いてだ。ついこんなことを言った。
「現地の宗教のそれか」
「そうですね。とにかく凄い虎ですから」
「だからか」
「はい、誰もがそう言います」
また言うガイドだった。彼にしてもだ。語るその声には憧れがあった。その白い虎、マドールがまだ見ていないその虎に対する。
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