第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十三 〜来客〜
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かわないで下さい!」
「ったく、歳三みたいな本当に強い男は貴重なんだぜ?」
「睡蓮。話が横道に逸れているぞ」
「おっと、そうだな。歳三の酒を呑みたかったのも理由の一つだが」
そう言って、睡蓮は声を潜める。
此所では聞き耳を立てられる恐れはないのだが、無意識にそうさせるのであろう。
「山越の一件、まずは礼を言わせてくれ。まさか、士一族が絡んでいたとは思わなかったんでな」
「いや、あれは偶然が重なっただけの事。それに、いずれは露見していた事だ」
「いやいや、明命が懸命に調べても突き止められずにいたんだ。奴らがどこから資金を得ていたのかがな」
「ふむ。ならば今は抵抗も弱まった訳だな?」
「ああ。資金源さえ断っちまえば、将兵の質は俺の方が圧倒してるんだ。脅威にはならねえさ」
そこまで話すと、睡蓮は杯を干した。
「ただ、捕虜にした奴から不穏な事を聞いてな。お前に直接報告しておきたかったのさ、内容が内容だけにな」
「ほう」
「……まだ真偽は確かめられちゃいねえがな。どうやら、歳三に反旗を翻した連中は、洛陽の玉無しどもとも繋がっているらしいぜ」
「……あり得る事だ」
「だから、あんな手に出たのは山越と繋がって自分たちの利権を守ろうとしただけじゃねえって事になる。いずれは正式に刺史や牧の座も、って事だったんだろうな」
「利害が一致した輩同士が手を組んだ、という訳か」
「そうだ。だが、これでもう思い通りにはいかなくなった。玉無しどもも、資金の当てがなくなる……」
「新たな手を打ってくる、という事か」
「もともと、連中は歳三や俺を警戒している。用心に越した事はないぜ?」
「……うむ」
「……う〜ん……。あれ、わたし寝ちゃってた?」
璃々が目を覚ましたようだ。
「さて、そろそろ出るとするか。二人とも、城内に案内するぞ」
「いや、俺はもう少し呑みたい。それに、酔っ払ったまま城内に入るのはまずいだろ?」
「……召し上がるのは程々にしていただきたいですが、酔いのない状態で伺うのには賛成ですね。歳三様、明日改めて」
「そうか。ならば、亭主に宿の手配はさせておく」
「ああ、すまんな。もし、俺や飛燕を抱く気になったら来るがいいさ」
「睡蓮様! いい加減にして下さい!」
全く、何処まで冗談なのかわからぬな。
「さて、璃々。そろそろ紫苑のところに戻った方が良かろう」
「うん。おばちゃん、おねえちゃん。またね?」
璃々の手を引き、店の外に出た。
……と。
「主。一人で出歩くなと、皆から言われているではありませぬか?」
星が、そこに立っていた。
「一人ではない。客人が一緒であった」
「おや、然様ですか。璃々、一体誰が一緒だったのだ?」
「えーとね、睡蓮おばちゃんと、飛燕おねえちゃんだよ」
「……なるほど。
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