第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十三 〜来客〜
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
らいには慣れておらぬ私では、どう言い聞かせたものかわからぬ。
「土方様、宜しいでしょうか」
そこに、兵がやって来た。
「如何致した?」
「は。只今、孫堅と名乗る人物が来ております。土方様にお目通りを、と」
「睡蓮が? 一人でか?」
「いえ。将と思しき人物と一緒です」
「今、何処にいる?」
「はい。城門のところでお待ちいただいております」
「……よし、そこに案内せよ。璃々、少し待っておれ」
「ううん、なら璃々もいっしょに行く」
やれやれ、扱いにくいものだな。
「仕方あるまい」
万が一、という事もある。
兼定と堀川国広を帯び、城門へと向かう事とした。
「ねえねえ、お手々つないでー」
「……私とか?」
「他にいないでしょ? 駄目?」
「……好きにせよ」
「わーい」
警戒心が薄いのか、璃々は無邪気にはしゃいでいる。
ふっ、これでは鬼も形無しだな。
「よお。久しぶりだな」
「ご無沙汰しております、土方様」
紛れもなく、そこにいたのは睡蓮本人であった。
そして、隣にいたのは飛燕(太史慈)。
「……仮にも州牧が、前触れもなしに参ったか」
「いいじゃねえか、堅い事言うなよ。な、飛燕?」
「はは……。申し訳ありません、睡蓮様がどうしてもご自分で行く、と言い張りまして」
「……とにかく、立ち話も何であろう。何処ぞで昼食などどうだ?」
「お、いいね。勿論酒付きだろうな?」
酒好きは相変わらずか。
「好きにせよ。公務中ならば話は別だが」
「ああ、そんなのは後でいいさ。飛燕、お前も付き合え」
「……はぁ」
この二人が一緒ならば、皆に叱られる事もあるまい。
「暫し、城下へ参ると愛里に伝えてくれぬか」
「は、はっ!」
呆気に取られていたのは、どうやら兵も同じだったようだ。
州牧が単身同然でやって来る事自体、誰でも目を疑う筈だからな。
疾風の手の者が経営する飯店へと、皆を案内する。
此所ならば、間諜の眼を気にせずに済む。
「へえ、なかなかいい店じゃねえか」
「そうですね。……ただ、店の人間はただ者じゃなさそうですが」
「だな。おい歳三、まさか俺達をどうにかしようってんじゃないだろうな?」
真顔で周囲を見回す飛燕と、冗談めかして言う睡蓮。
「流石だな。だが、此所ならば如何様な話でも出来る」
「そうか。ま、お前はいずれ、俺の息子になる奴だ。疑っちゃいねえよ」
まだ諦めぬのか……全く、この執念には恐れ入る。
「……とりあえず、中に入るぞ。亭主、頼む」
「土方様。畏まりました」
亭主は何も聞かずに、我らを奥まった個室へ通した。
「御酒を召し上がりますか?」
「ああ。この子と私は食事を頼む」
「肴は私の方で見繕いますので。それでは、ごゆっくり」
亭
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ