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第一章
時計と鎖のお話
懐中時計はです。いつも一緒にいる鎖とこんなことを話していました。
今二人はお店のショーウィンドウの中にいます。まだ誰にも売られていないのです。
そこで街行く人達を見ながら。懐中時計は言いました。
「ねえ鎖君」
「何、時計君」
「僕達どんな人に買ってもらえるのかな」
こう鎖に尋ねるのでした。
「一体どんな人にかな」
「ううん、どんな人だろうね」
鎖は傾げる様な調子で時計に言葉を返しました。
「わからないね」
「わからないんだ」
「いい人だったらいいけれどね」
けれどです。鎖はこう時計に言いました。
「僕達を丁寧に扱ってくれる人だったらね」
「いいけれどね」
「どうなるかなあ」
彼等は期待しながらお話をしています。
「どんな人が買ってくれるか」
「楽しみだね」
そんなお話をしているうちにです。ある日。
お店に恰幅のいい立派な外見の男の人が来ました。ぴんと伸ばした口髭が目立ちます。その人がお店に来てなのでした。
そのうえで。店長さんに言いました。
「あのショーウィンドウにある懐中時計だけれど」
「はい、あの時計ですね」
「買いたい。いいかな」
こう店長さんにお話するのでした。
「あの鎖と一緒にね」
「わかりました。それでは」
店長さんは快く頷いてでした。そうして。
時計と鎖はその男の人に買われました。彼等はすぐに男の人のコートのポケットに入れられました。そしてそのポケットの中で。
彼等はです。お話するのでした。
「やっと買ってもらったね」
「そうだね」
まずはそのことを喜んでいます。品物は買われることが仕事ですから。
「さて、これからだけれど」
「本当にどうなるかな」
「本当に優しい人だったらいいけれど」
「僕達を大事にしてくれる人だったらね」
「粗末に扱われたら嫌だね」
「それはね」
それは嫌なのでした。彼等も。
期待と不安が入り混じっています。それがはじまりでした。
鎖はコートにつけられ時計はそれでつながりました。男の人は何かあるとポケットから時計を出してです。その時間を見るのでした。
時計はです。このことに満足して鎖に言います。
「こうして使ってもらってね」
「満足してる?」
「うん、とてもね」
こうです。実際に満足している声で鎖にお話するのでした。
「時間を見てもらってね」
「そうだね。それはね」
「君もかい?」
「うん、こうして立派なコートにつなげてもらってね」
それでだというのです。
「僕は。幸せだよ」
「じゃあ僕と一緒だね」
「そうだね。一緒だね」
「このままずっとね」
「一緒にいられたらいいね」
こんなことをお
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