第八十九話
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ってことだよね?」
ここにはいない彼にメッセージを呟く。もちろん届くわけはないが、いつか遊ぼうという子供じみた約束の宣誓。それが終わるとその小柄な身体を布団から立ち上がらせ、彼女は机に備え付けられたパソコンに踊るように向かう。その楽しげな気持ちを抑えられないように。
「GGOであれだけキモチイイんなら、ホンモノはどれくらいなんだろ?」
呟きながらパソコンのセットアップを待つと、新着メールが来たことを知らされる。慣れた手つきでメールを開封すると、相変わらず日本語と英語が混じったような文面が表示される。《死銃》についてはもう終わりで、次のゲームに移るという内容だった。
「あーあ、やっぱりステルベンくん負けちゃった?」
自分も人のことは言えないわけだけれど。それだけ確認してパソコンを閉じると、早々と身支度を整えていく。《死銃》事件がトリックがバレて表面化した以上、この家に警察が来るのも時間の問題のため、メールの主がそれより早く迎えの車を出してくれるということだ。今度はもっとエキサイティングなゲームで、ショウキと戦わせてくれるという約束つきで。
そうと決まれば話は早いと、さっさと身支度を整えながらも、きちんとオシャレはかかさないでおく。軽く化粧でもしようと鏡を見ると、そこで彼女は初めて自分のある状態に気づいた。
「あれ……ウチ、泣いてる?」
悲しい夢だったのかな――と、続けて呟いた彼女だったが、次の瞬間には涙を拭き取って歌を歌い始める。泣いていたといっても、涙は一筋だけ伝わっていただけに過ぎず……それでも、涙の痕はしっかりと残っていたが、それも化粧に上書きされていき、見える範囲ではすっかりと消え去った。
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