暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
第八十九話
[7/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
別が違う奴が一人混じってないか?」

 女三人寄ればかしましいとは言ったもので。そこにさらに一人加わっているのだから、騒がしいのも道理であり。女子の雑談に適当な相槌を返していると、気づけば女子会が発足しようとしていた。凄まじいほどの会話の発展速度に驚いていると、里香がアニメの裁判長が判決を下すような、そんな動作で大げさに宣言する。

「そうと決まれば善は急げ、翔希の家で女子会ね!」

「おい待て」

「まあまあ、ここはあたしたちがもつからさ! ……あ、ひよりも座ってていいわよ、新入りサービス!」

 そう言って里香は勘定のレシートを持つと、珪子に直葉を連れてレジの方へ向かっていく。そんな彼女の様子に息を吐きながら、俺は諦めて残ったコーヒーを飲み干そうとしていると、同じように残っていた飲み物を優雅に飲んでいるひよりと目があった。

「その……大丈夫ですか? 翔希さん」
「まあ大丈夫だよ……これぐらいなら。ありがとう」

 遠慮がちに聞いてくるひよりに「気にするな」とばかりに手を振ると、ひよりは何かおかしかったのかクスリと笑う。

「里香さんと信頼しあってるんですね」

「ゴホッ」

 恥ずかしげもなくそんなことを言ってのけるひよりに、気恥ずかしくてコーヒーを噴き出しそうになるが、何とか堪えて……無理だった。当のひよりは、そんな俺を不思議な様子で見つめながら……それから、どことなく寂しげな表情を見せた。

「皆さんのその強さが、SAOをクリアに導いたんでしょうか」

「…………」

 ひよりの真摯な言葉に対して、俺も飲み干したコーヒーのカップを机に置いて、一人のSAOプレイヤーとして対話する。かつて無理に気勢を張っていた自分に似た、キリトを強さの象徴として姿を真似ていた少女に対して。柏坂ひよりというSAO帰還者ではなく、SAOを体験していた一人のプレイヤーに。

「そうもしれない。だけど、そんな強さもういらない……今は、あんなデスゲームじゃないんだから」

 独白は続いていく。GGOで邂逅したSAO失敗者と《死銃》に、自分たち以外のSAO帰還者というひよりに、それらと会って得た結論を。

「今は精一杯ALOを楽しもう。いなくなった奴らの分まで」

「そう……ですね……」

 デスゲームのことを忘れることなど出来はしないけれど、あの頃の浮遊城はもう無いのだと。SAOにいつまでも囚われる失敗者ではなく、真に生還者となるべく。……口下手ながらそんな気持ちを伝えた言葉に、ひよりは何を思ったのかニコリと笑う……寂しげでは、あったものの。

「だから要するに……何だ。ALOを楽しんでいこう。これから一緒に」

「はい。ずっとレベル上げばかりだったので、これからALOのこと教えてください」

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ