響ノ章
写真家赤城
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無理よ」
けれどその興味心は、あっさりと折られる。
「何故ですか?」
「私に知られたのも、彼にとっては想定外だったのよ。私も、他の人に言おうとは思わないわ」
「……」
「けど、ね。例えば、ただ女の子に興味があって写真を撮っているとか、やましい心から来ているわけじゃないのよ?」
それは、確かにそうだろうと思う。何度か彼に撮られているけど、妙なアングルから撮られたりはしない。それに、彼は笑顔を撮りたがる。色欲から来るものではないと、感覚的にだけどわかる。
「わかりました。それを知ることは諦めます。それに……彼には、もうちょっと愛想良くしますよ」
結局、彼のことは分からず 終じまいだったけど、彼が優しいことは確かだし、全てを知った上で、赤城さんは彼を嫌っていないのだ。だから、彼女を信じる。彼女が信じる彼も、可能な限り信じる。
「そうしてくれると嬉しいわ。彼にまた、一緒に綿飴をいただきましょう」
彼女はそう言うと、遠くを見る。そうして、目を少し細めた。
「……妹達も、食べたらきっと喜ぶわ」
耳に届いた彼女の言葉は、きっと、私に聞かせるつもりはなかったのだろう。本当に、小さな呟きだった。
そのあと宿舎まで戻ると、いつものように彼女と別れた。
◇
今思い返すと、赤城ときちんと交わした会話は、 宿舎海岸での
いつもの別れの言葉が最後だったのだ。
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