暁 〜小説投稿サイト〜
珠瀬鎮守府
響ノ章
写真家赤城
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 彼女の手を握ったまま、歩き出す。彼女は私に連れられるように歩き出した。
「彼も?」
「え?」
「白木さんのことも、好きなのですか?」
 不意に訊かれたその質問の真意は、分からなかった。けど、
「ええ。結構嫌いな娘も多いけど、ね。私は好きよ」
 嘘を言う気には、ならなかった。
「何故ですか? はっきり言いますが、私はあまり好きではないです。彼が、何をしたいのか分からない。その真意も、目的も、理由も」
「そうかもしれないわね。けど、それを抜いたら、結構彼良い人よ。優しいし」
「そ、それは否定しませんが、如何せん……」
「知ってもね」
「え?」
 一旦、言葉を切った。彼は、本当に 私達艦娘に優しい。困っていたら、できる事全てを使って助けてくれる。気を配ってくれる。ちょっと、写真を撮られるのは嫌な娘もいるけれど。
「彼が、何を思って何の行動しているか知ったらね。貴方はどう思うかしら。嫌うかしらね。同情するでしょうかね」
 彼が、そんなに優しい理由。そして、写真を撮る理由。それを知ってしまったら、彼の認識を改めるだろう。
「赤城さんは、それを知って、彼を、好きなの?」
「知ったから好きになった。というわけではないわ。知った今も好き、ということよ」
 答えるのはちょっぴり恥ずかしく、また顔が赤くなっているだろう。けど、私が彼女の手を引いているから、顔を見られることは恐らくはなかった。特に恋愛という事はない。彼をきっと、人として好きなんだと思うから。


                   ◇


「美味しかったでしょう?」
 綿飴をご馳走になってから、用事があるとのことなので、白木さんと私達は別れた。
「ええ、とても」
 私は尋ねられた言葉に、正直に答えた。
 確かに、綿飴というお菓子は、赤城さんが言うとおり、とても美味しかった。ふわふわとした独特の食感。舌で瞬時に溶け、見た目通りの柔らかな甘味が広がるのが、なんとも言えない美味しさだったのだ。できることなら、また食べたい。
「お砂糖も結構な値段がするでしょうに、用意しているんですね」
「以前に皆に配った時の余りだそうよ。あれが少なくなってしまえば、もう頼めないわね」
「少なくなってしまえば? なくなったらではないのですか?」
 言うと、彼女はため息を吐ついた。
「彼はね、なくなってしまったら買ってくるわよ。給料叩いてでも」
 ああ、成る程。優しい。私が思っている以上に、彼は私達に優しいのだ。ただ単に、私達と仲良くなりたいから、とかいう理由以上に、何かが彼の中にはあるのだろう。
「……彼は、教えてくれますかね」
「え?」
 少々気になった。彼が行動する理由とか、何のために写真を撮るか、とか。
「彼が、何を思って写真を撮っているかです」

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