響ノ章
写真家赤城
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喜んで食べてくれたのだが、その中でも赤城は、この味の虜になったらしく、度々これをせがむようになった。
一度しかやる気がなかった私は、最初は断ったのだが、結局根負けしてしまい、彼女に度々作ってあげていた。
「どうする?」
声をかけると、視線が泳いだ。もう少しで落ちる。
「わ、私は……」
彼女は、綿飴で買収されることに抵抗を感じているらしい。だが――
左手の指を、二本立てる。
「二個」
「承りました!」
こうして、写真家赤城の撮影が始まることとなった。
◇
ぶらりぶらりと、鎮守府の中を歩く。あの後、白木さんはどうするのかという話になって、付いて来るということになった。それなら、別に彼が撮っていもいいと思うのだが、綿飴が掛かっているのだ。そんなことは言い出せない。
「どんな写真を撮ればいいのですか?」
「そうだな。艦娘を撮ってくれればいい。自然体でも、こちらに気づいていても。そこら辺は君に任せる。けれど、悲しい顔はやめてくれ」
「了解」
早速、写真機を握って、ファインダー越しに、近くにいた艦娘に焦点を合わせた。二人の艦娘が、堤防の上を歩いている。二人共、重巡だ。焦点を合わせて直ぐ、思い切ってシャッターを押した。
独特の音がしたので、彼女たちが気づくと思ったのだが、そのようなこともなく、そのまま彼女たちは歩いて行った。
「これでいいのですか?」
「ああ。露光とかは大丈夫だから、今みたく焦点を合わせれば。けど、逆光はやめてくれ」
「そういうことは、初めに言うものではないでしょうか」
「怒るなって。どうせお前が失敗したって、私のお金が消えるだけだ」
む。これは困った。彼は私を困らせる為に言った……わけではなさそうだ。
銀塩は買うのにそれなりのお金がかかる。現像にも、だ。彼の給料は、これに結構な額が消えていっていることを知っている。
まずい。これはまずい。軽い気持ちで受けたのが間違いだった。いや、綿飴は非常に美味しいけど。って、意味がわからない!
「どうした? 次、撮りにいかないのか」
「え、ええ。行きますよ。行きますとも。頑張って撮ってみせますっ」
彼の財布のために、失敗は許されない。気合入れてけ私。綿飴のためにも!
「あ、赤城さん」
写真を撮ることにも 一寸ちょっと慣れてきた頃、親友にあった。響という駆逐艦。
「こんにちは、不死鳥さん」
誂からかって、彼女をそんな風に呼んだ。彼女はその小さな体で、勇猛果敢に敵に挑み、勝利をもぎ取る艦として、一寸この港では有名なのだ。
「もう、赤城さん。やめてくださいよ」
響ちゃんはそう言うと、かぶっている帽子を、恥ずかしそうに僅かに前にずり下げた。
「あら、御免なさい」
全く謝
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