アリアドネの糸
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「フィレス様」
移動後、花園に戻っていたリースさんが、心配そうな顔で翔んできた。
「その、アリア様は大丈夫でしょうか?」
「なんとも言えません。ベゼドラさんが何かをしたのは間違いないですが。精霊の皆さんは大丈夫でしたか?」
「はい! 皆、すっごく元気になりました。聖天女様にもフィレス様にも、言葉では表せないくらい感謝してます!」
「それは良かったです」
『水鏡の泉』に残ったマリアさんとティーは、リースさんに話を聴いて、泉から離れた精霊達を捜し回っていた。
レゾネクトから気配を消す目的で求めた花の実が大いに活用された甲斐もあって、大多数の精霊は助けられたらしい。
私も、あちこちを移動中、見かけた精霊達に実を持たせて回復させたり、泉に魔王は居ないと伝えたりしてた。
残念ながら間に合わなかった精霊は、それぞれの目の色をした花に姿形を変えていたそうだ。
そう聴いて、花園の正体をちょっと考えてしまったのだが。
知らなくても良いことが、世の中にはたくさん溢れてる。
あえて質す必要はないだろう。思い過ごしかも知れないし。
「私達三精霊は、いつ、どこまででもフィレス様達に付いて行きますから。及ばない点も多いと思いますけど、なんでも命令してくださいね!」
リースさんの紅い目が、私の目を真剣に見つめる。
本来の精霊は義理堅い種族なのだと、マリアさんが言ってた。
なるほど、私も元は嫌悪の対象であると知っているのに。
彼女達は惜しみなく協力してくれる。
「ありがとうございます。とても心強いです」
ならば私も、彼女達の気持ちに報いなければ。
精霊達の穏やかな未来を築く手助けができると良いのだが。
「……う……」
「アリア様!?」
横たわるロザリアさんが小さく呻き、もぞ……と動いた。
リースさんが慌てて顔を覗く位置に降りる。
「リースさん。今の彼女は、『アリア』ではなく、『ロザリア』さんです。多分、アリアと呼ばれるのは嫌がりますよ」
クロスツェルさんの教会で自己暗示みたいにくり返してたし。
ロザリアさんにとっては、重要なことなのだろう。
リースさんにも通じるものがあるのか、そうですねとあっさり頷いた。
「ダメ、だ、ベゼドラ……!」
「! ベゼドラさん?」
ロザリアさんは眠ったまま。
胸元を掻きむしるようにして、長衣に細かいシワを刻む。
夢にうなされているのか?
それとも、ベゼドラさんの身に何かが起きている?
「ロザリアさん!」
「ロザリア様!!」
リースさんと一緒になって、苦しげに脂汗を滲ませる額を押さえるが。
「やめ……そいつに、『 『 』』に強い意識を向けるな
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