アリアドネの糸
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結果だけ見れば、直接ではないにしろ自分の身勝手さでクロスツェルの家族を皆殺しにしたんだ。自己嫌悪にもなるわな。
だが、私にしてみりゃひたすら鬱陶しいだけだ。
お前の所為で、クロスツェルもベゼドラも死にかけてんだぞ。本物の女神だって、もう少し遅かったら殺されてた。
お前の! 私の所為で! どれだけの奴が死んだと思ってんだ!!
「……ええ。貴女は、かつての神父が信仰していた女神ではない。私は、私に生きろと言ってくれた貴女を愛しているのです。貴女達二人を合わせた、貴女という存在だけを愛しています。ロザリアと共に、私の手を取ってくれませんか? 私は、貴女と一緒に……生きたい」
「どうして!? どうして私にそんな……っ!」
「遥か昔、女神として悪魔達を封印したアリア。貴女は何故、世界を護ったのですか?」
「護ろうとしたんじゃない! 自分にとって居心地が良い世界に変えようとしたのよ! 私の……我が儘で……っ」
「おや、奇遇ですね。私も同じ。我が儘です」
アリアがピタッと止まった。莫迦みたいに濡れまくった顔をクロスツェルに向けて、信じられないって目で訴える。
にこっと笑うクロスツェルはアリアの横に片膝を突いて、固く握った左手をふわりと引き寄せ……あれ? と、私が明確な引っ掛かりを覚える間も無く、その甲に軽く口付けた。
「貴女が欲しい。それで私自身がどうなっても構わない。私の傍らで幸せに笑って欲しい。……理由なんてそんなものです」
アリアも。ついでに私も。
言葉が出ない。
アリアは驚いてるからだろうけど、私は……き、聴いててめっちゃくちゃ恥ずかしい……ッ!
顔やら首やら背中やら、とにかく全身がむず痒い!!
なんだコイツ!? こんな性格だったか!?
やっぱり偽者!? 幻!?
「レスター……」
「いいえ。私はもう、クロスツェルです。ただ、戒めの意味が少し変わってしまいましたけど」
「……?」
「貴女達の心を鎖で繋いで、誰の手も届かない場所に架ける。私を愛してください。他の誰より……世界よりも、私を選んで」
やっぱり偽者かああああぁぁあッ!?
死ぬ! なんかいろんな意味で殺される!!
駄目だコイツ。なんとかしないと!!
「クロスツェル……私は……」
爆発しそうな頭を抱えて悶える私と正反対に、アリアはふるふると首を振った。
く……っ! 年の功か!? スルースキル半端ねぇ…………って、違うか。
コイツは……
「私は、貴方を選べない」
俯いて閉じた目蓋の隙間から、涙が一粒零れ落ちる。
「私は……」
小さな滝の近くに生えてる花の実を摘んで、気を失ったロザリアさんの長衣の袖に忍ばせる。これで暫くはレゾネクトから気配を隠せると思うが……魔王の力で繋
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