アリアドネの糸
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。
「やっと会えましたね、ロザリア。貴女が消えていなくて、良かった」
三つの人影以外は何も無い、真っ白な空間の中。
私とアリアの意識の中に、長い黒髪を首筋で一つに束ねた男が居る。
私がよく知ってる、教会で一緒に暮らしてた頃のまま笑う神父が居る。
「クロス、ツェル?」
嘘だ。
だって、クロスツェルは今、レゾネクトに捕まってる。
残り少ない魂の大半をレゾネクトに抜き取られて。
死ぬ寸前で時間を止めた体も、どこかに隠されて。
だから、私は。
「本当なら私の体に戻してもらう想定をしていたのですけど、そうできない事情があったのでしょうか? 結果として貴女に会えたから良いのですが。体に異常などはありませんか? ロザリア」
「異常、って」
「詳しい理窟までは解りませんが、この私は、ベゼドラの悪魔としての力で形を固定しています。一つの体の中に、三人分の人格と二人分の魂が同時に存在していては、体のどこかしらに、相当な負荷が掛かるのではないかと。ロザリアは大丈夫そうですが、貴女は大丈夫ですか? アリア」
私の背後で膝を抱えて丸くなってるアリアの肩が、大袈裟に跳ねた。
顔を合わせるのも怖いのかなんなのか、耳まで塞ぎやがった。
「……やはり、嫌われてしまったのでしょうか?」
「っ違う!!」
クロスツェルの言葉に慌てたアリアは、勢いで顔を上げ
「私は……! 私のせいで……ごめんなさい、ごめんなさい、レスター!」
また、頭を抱えて泣き出した。
ああもう、うっぜぇ!
「何故、その名前を?」
現在はほとんど誰も知らない筈の『レスター』に反応した。
ってことは、本物のクロスツェルなのか。
そうか……ベゼドラが、クロスツェルを守って……。
「……レゾネクトがアリアにお前の過去を見せたんだ。契約は解るよな? アリアとレゾネクトで交わしてたそれを進めさせようとしたらしい。つか、なんなんだよあれ!? 私は謝れって意味で言ったんじゃねぇぞ!? あれは、とにかく殴らせろって意味で! 勢いで!」
そうだ。コイツが目の前に居るなら、今この場で殴れるじゃないか。
と詰め寄って、腕を振り回してみるが。
私の握り拳は、クロスツェルの体? 精神体? 魂? を通過して。
見事なまでに空回った。
くそっ! 触れないのかよ!
むかつく!!
「もしかして、全部知られてしまいましたか?」
苛立って歯ぎしりする私を無視したクロスツェルは。
首を傾げて、私とアリアを交互に見る。
「ああそうだよ! 情けねーガキの時分から、人の話をまったく聴かないで都合良く解釈しやがってるお前まで、全部知ってる! アリアも
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