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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第二十一話 新人事(その1)
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以上国内事情を優先する事は危険だと」
「そうだ、君も賛成したはずだぞ、トリューニヒト」

トリューニヒトがまた溜息を吐いた。
「分かっている。私はシトレを押したんだ。皆もそれに賛成した。決まったと思ったんだが国防委員の一人が反対した……」
「一人? それで変わったというのか」
トリューニヒトが頷いた。一人? 一体誰だ? 国防委員会におけるトリューニヒトの影響力は強い、それをたった一人が覆した?

「彼は艦隊の再編等に主として関わっているんだが、シトレ本部長を動かしては困ると言うんだ」
「どういう事だ?」
嫌な予感がした、何か得体の知れないものを踏みつけた様な感じだ。足を上げて確かめるのを躊躇う様な感触に似ている。

「ここ近年、同盟軍は敗北続きだ。艦隊の損失も大きい。その再編にシトレが大きく関わっているらしい」
「……」
トリューニヒトは遣る瀬無さそうな表情をしている。嫌な予感がますます強まった。

「新編成の艦隊を編入するのか、それとも辺境警備の艦隊を編入するのか、或いは新兵が多いから辺境で経験を積ませ二、三年後に正規艦隊に組み込むのか……。それを押さえているのが」
「シトレだという事か……」
トリューニヒトが苦い表情で頷く。

「帝国が国内の不安要因を解消したのは分かった、ブラウンシュバイク公が恐るべき相手である事も分かった。今後軍内部には帝国を、公を軽視する人間は居ないだろう。ならば宇宙艦隊司令長官にはクブルスリー中将を当てるべきだ。そしてシトレ元帥にはこれまで通り統合作戦本部長として大局を見て貰った方が良い、軍の再編もスムーズに進む……」
「……」

「それで流れが変わった。確かに正論ではある。正規艦隊の再編は急務だ。今のままではまともに使える艦隊は半数も無い。首都警備にあたる第一、ようやく艦隊の再編が終了した第五、第十、第十一、第十二の五個艦隊だ。これからまた第二、第三、第四、第七、第八、第九の各艦隊を整えなければならん。皆が彼を支持したよ、私も反対は出来なかった」
言葉が無かった。まさかそんな事が起きたとは……。

「どうにもならんか」
「どうにもならん。次の宇宙艦隊司令長官はクブルスリーだ。来週には正式に発表されるだろう……」
悪い人事ではない、最善ではないが悪い人事ではない。いや、艦隊の再編の事を考えればこれが最善なのだ、そう自分に言い聞かせた……。



帝国暦487年  4月 4日  オーディン  ブラウンシュバイク公爵邸  ラインハルト・フォン・ミューゼル



「本当は昨日伺おうかと思ったのですが……」
「どうやらお気遣い頂いたようですね」
「いえ、そういうわけでは……」
「確かに昨日は色々と有りました。今日来て頂いて良かったと思います」
公の言葉に皆が顔
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