第二十一話 新人事(その1)
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はいない。国防委員長にはもう一度私の事も候補者として検討して欲しいと頼むつもりだ」
「……」
今度こそ正しい選択を行って欲しいものだ。シトレ本部長を、とは言わないがドーソン大将の様な人物は困る。さて、政府は誰を選ぶのか……。
宇宙暦796年 3月 5日 ハイネセン ホテルシャングリラ ジョアン・レベロ
人目を避けるようにホテルに入り、階段で五階に向かった。エレベータでは誰に会うか分らない、階段の方が安全だ。ダイエットにもなる、肥満は良くない。有権者達からも動きが鈍いのではないかと思われる事は避けなければならない。誠実で行動力が有る、そんなイメージを保つのも決して楽ではない。
周囲を確認しつつ五百十三号室の前に立ち軽くドアをノックする。
「誰だ?」
「レベロ」
互いに押し殺した小さな声で確認し合う。ドアが開き、私は部屋に急いで入った。
部屋の主が先に立って歩く。
「いつもこの部屋だな。どうなっているんだ」
「このホテルのオーナーが私の友人でね、この部屋は余程の事がなければ使われる事は無い」
部屋の中央に有る椅子に腰を下ろした。
「つまり君専用の部屋というわけか、トリューニヒト」
「そう言う事になるな」
嬉しそうに自慢するな、不愉快だろう。
「この部屋は美人と密会用に使うとオーナーには伝えてある。あくまでプライベートで使うとね」
「大丈夫か」
「大丈夫だ、ここに来る美人は君だけだからな」
そういう意味じゃない、オーナーが信じられるかという意味で訊いたんだ。溜息を吐くとトリューニヒトが笑い出した。
「安心して良い、オーナーは信頼できる人物だ」
この野郎、私をからかったか……。このロクデナシめ。
「それで、用件はなんだ。司令長官の人事か」
トリューニヒトは一つ頷くと話し始めた。
「国防委員会で三人の名前が挙がった。統合作戦本部長シトレ元帥、第一艦隊司令官クブルスリー中将、第五艦隊司令官ビュコック中将だ」
なるほど、大体予想された名前が挙がっている。考える事は皆同じか。
「それで」
「ビュコック中将を押す人間は少なかった。彼は士官学校を出ていない。彼では宇宙艦隊の参謀達を使いこなせないのではと不安視する声が多い」
「エリートだからな、兵卒上がりに使われる事は嫌がるか……」
トリューニヒトが私の皮肉に頷いた。
「クブルスリー中将に決まった」
「ちょっと待て、シトレじゃないのか」
「だから君にここへ来て貰った」
「……」
少しの沈黙の後、トリューニヒトが溜息を吐いた。
「君の言いたい事は分かる。軍に対する国民の不満は酷い。そして帝国は国内の不安定要因を解消した。となればここは力量の有るシトレを配して国防の充実を図るべきだというのだろう。これ
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