アインクラッド 後編
年頃乙女、三人寄れば――
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服装をオシャレに改じてくれようと言うありがたくないお節介を二人から頂戴したものだ。
そこでリズベットは散々っぱら二人の着せ替え人形にされ、かわいらしい檜皮色のエプロンドレスにベビーピンクの髪という驚異的なカスタマイズを施されてしまった。アインクラッドで間違いなく五本の指に入る美少女二人に絶賛された恰好ということで実はちょっぴり嬉しかったりもしたのだが、ツナギに茶髪のショートという洒落っ気の全くない見た目からの激変はさすがに気恥ずかしく、適当なところで戻すつもりだった。……のだが、この恰好になってから店の売り上げが倍増してしまい、戻すに戻せなくなってしまったために不承不承据え置いている。
「……で、今日は何? ずいぶん早いじゃない」
「あ、これお願い」
リズベットがハーブティーの入ったポットとティーカップを並べていると、勝手知ったる、とでも言いたげに工房を横切って白木の丸椅子に座ったアスナが腰のレイピアを投げて寄越した。片手で受け取ったリズベットは、少しだけ刀身を抜いて検分しながら首を傾げる。
「まだあんまりヘタってないじゃない。研ぐのはまだ早いんじゃないの?」
「そうなんだけどね。ピカピカにしときたいのよ」
「大事なデートだもんね」
「ちょっ、エミ!?」
「へぇぇー?」
「デート」という単語に耳ざとく反応したリズベットが、ニヤニヤと笑いながら椅子ごとアスナににじり寄った。アスナが顔を赤く染めて抗議の視線をエミに向けるが、当の本人はそれをスルー。
「アスナだって、ずっと隠しとくつもりじゃないんでしょ?」
「……まあ、そうだけど……」
「ねえ、相手は誰なのよ、詳しく聞かせなさいよ。てか、ここに連れてきなさいよ」
「だ、ダメ、まだ秘密! まだぜんぜん、その……一方通行だし……」
「へーっ!」
リズベットは目を丸くして二重に驚いた。そもそもアスナは《攻略の鬼》と揶揄されるほどこの浮遊城の攻略に熱心な人物で、その熱の入れようは見ているこちらが心配になるほどだった。そんな彼女が特定の人物に恋をしたということだけで驚きなのに、まさか口説かれる側ではなく口説く側に回るとは。その人物には是非一度お目にかかってみたいものだ。
「まあ、そのうち会わせてもらえると期待して待ってることにするわ。でもそういうことなら、ウチの宣伝、よろしく!」
「リズはしっかりしてるねえホント。紹介はしとくけどね」
「伊達に商売やってるわけじゃありませんからね。……そういえば、エミはどうなのよ、マサキとは」
「え? っと……アスナと大体おんなじ、かな」
エミは苦笑いで答える。それを見たリズベットが、腕を組んで唸った。
「まさか、アインクラッドの二大美人が揃って片思いとはねえ……世の中珍しいこともあったもの
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