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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
年頃乙女、三人寄れば――
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た。



「一件目のオーダーはっと……」

 アインクラッド第四十八層主街区《リンダース》に存在する、一軒の職人クラス用プレイヤーホームにて。ごと、ごと、ごと。と、外の水車が刻む緩やかなリズムを感じながら、リズベットは炉の前に立った。左手に持ったメモに目を通しつつ、ウインドウから金属素材(インゴット)を取り出して炉に放り込む。この場所に居を移して三ヶ月。この職場にも慣れたもので、初めの頃はいちいち工作機械の配置に戸惑い、もたついていた工程も、今では流れるように行える。
 併設された巨大な水車が特徴的なその家こそ、リズベットの住処であり、また彼女の経営する武具店――《リズベット武具店》であった。
 メモをストレージにしまい、赤熱したインゴットをヤットコで金床(アンビル)の上に取り出す。ポップアップメニューから作成アイテムを指定して、一度深呼吸。
 “武器を作るときは余計なことを考えず、ハンマーを振る右手に意識を集中し、無の境地で叩き続けるべし”――SAO鍛治職人たちの間で飛び交うオカルトの一つで、自分のことを合理的な人間だと解釈しているリズベットが唯一信じている説だ。
 絶え間なく流れる水車の音が、徐々に小さくなっていく。そのタイミングで、リズベットはハンマーを振り上げ――


「「おはよーリズ!」」
「うわっ!」

 た瞬間、店舗スペースと繋がるドアが勢いよく開け放たれた。振り下ろされたハンマーが狙ったインゴットから大きく逸れて金床の端を思いっきり叩き、情けないサンドエフェクトが工房を満たす。リズベットが不快感を露にして振り返ると、《閃光》アスナ、《モノクロームの天使》エミが立っていた。

「あ、ごめん……」
「以後気をつけまーす」

 以前から「工房に入るときは必ずノックをするように」と口を酸っぱくして言い含めていた意味は多少なりともあったようで、二人は舌を出しながら謝罪の言葉を口にした。

「その台詞、何回聞いたかなあ。……まあ、叩き始めてからでなくてよかったけどさ」

 そんな二人を呆れ顔で見上げながら、金属を炉に投げ入れて立ち上がるリズベット。このやりとりは、まだ《リズベット武具店》が露店だった頃からのお約束だったりする。

 この二人とはそれなりに長い付き合いのリズベットだが、その二人の間に親交が生まれたのは、実はつい最近のことだと知らされた時はとても驚いた。二人とも攻略組のトッププレイヤー、しかも美少女とくれば、どこかで知り合っているはずだと思い込んでいたからだ。確かに言われてみれば、二人との会話でもう片方が出てくることは記憶になかった。
 そんな二人だが、最近急激に友情を深めているようで、今日のように二人での来店も珍しくない。以前三人でお茶会を開いた時など、リズベットの洒落っ気のない
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