アインクラッド 後編
年頃乙女、三人寄れば――
[2/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
てもらえますか……?」
「レシピですか? ……分かりました。エミさんには、特別ということで」
「本当ですか? ありがとうございます!」
「いえ、そんなに気に入っていただけたのなら、こちらも嬉しいです。……まずソースですけど、アルベリーの実を……」
タカミが快諾した瞬間、エミはぱあっと顔を輝かせ、ストレージから取り出したメモ帳に、真剣な表情でレシピを書き込むのだった。
パンケーキをぺろりと平らげたエミは、食後の紅茶を飲みながら今日の予定を組み上げていた。とは言え、分類的にはソロプレイヤーになるエミにとって、特に前からの予定が入っていない場合、やらなくてはいけないこと、というのは基本的に存在しない。となれば、どこか適当なフィールドダンジョンでレベリングに勤しむか、フリーの攻略パーティーに飛び込みで参加するか、それともマサキの家に突撃を仕掛けるか……。
「あれ、エミ?」
「え?」
紅茶も飲み終え、そろそろ席を立とうかという折になって、不意に横から声を掛けられた。エミがきょとんと聞き返しながら振り向く。すると、栗色のロングヘアを風になびかせたアスナが、テラス席と往来を隔てる柵に手をかけながら、こちらに向けて手を振っていた。
「今日は食べ歩き?」
「うん。ここ、知り合いのお店なんだけど、パンケーキが美味しいの。ミニサイズもあるみたいだし、アスナも食べてかない?」
「そうなの? ……じゃあ、ちょっと試してみよっかな」
口元に人差し指を当てて考える素振りを見せていたアスナだったが、やがてそう言うと入り口から回ってきてエミの対面に座った。注文を取りにきたタカミにアスナの分のパンケーキと紅茶のおかわりを注文し、そのアスナに問いかける。
「そういえばアスナ、今日攻略はいいの?」
「今日はオフにしてもらったの。……その、キリト君とデートなんだ」
「へーっ!」
仄かに頬を赤らめるアスナに、エミは賞賛の声を上げた。
二人の親交が始まったのは圏内PK騒ぎの直後。共通の友人、趣味の存在もあって、今では二人の関係は親友と言って差し支えないものにまで深まっていたのだが、二人の友情に何より寄与したものは、実はそれとは別にあった。
それは何か? ――そう、恋バナである。
アスナが言った「そういえば、エミとマサキ君って付き合ってるの?」という一言に端を発したその会話は、お互いの進展状況が似通っていたことも相まって爆発的な盛り上がりを見せた。エミはマサキに、アスナはキリトにそれぞれ想いを寄せていることやその理由、二人ともアプローチはしているのに進展がないこと等を瞬く間に共有した二人は、その酷似ぶりにただならぬ縁を感じ、がっしりと握手を交わしながら同盟関係の締結を誓ったのである。以来、二人はデートスポットの情
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ