一章
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わなと手を震わせて歯をぎりりと噛み締めた。その様子にさらに笑い声を高める役人だが、その笑い声は咳き込む音へとかわった。大口開けた下品な笑いは喉奥に入った氷で止められたのだ
「ぶ!が!!!はっっは!!……でめぇ……な、なにじやがる!」
氷を投げたのは、隣にいた黒服の男。空いたグラスに余った氷を的確に口のなかへ投げ入れたのだ。
「うるせぇ」
「な、は、はぁ?!何したのかわかってんのか!?役人だぞ、やくにん!!」
「だからなんだよ。人がゆっくり休んでるっつーのに、ガタガタと安物スーツを着て喚くんじゃねぇよ」
「なぁ???」
店内の様子が険悪になった。銃は全て男に向けられ、怯えた客たちは壁際で様子を見守り、店主も後ずさりしていった。
男は変わらず、険しく鋭い目で睨むわけでもなく、ただ横目で見ていた
「お、お前よそ者だな!入国章は!?金は払ったのかよ!」
「あいにくVIPでね。そんなめんどくさいものは必要ないことになってる」
「でもこの街じゃ違うんだよ!ほら全財産の80%だ!早くしろ!!入街金だ!無いなら死ねぇ!」
「……さっきから、聞いてねぇのか?弱小」
役人はひとこと聞き返そうとした。しかし、引き金を引くよりも早く伸びた手がそうはさせなかった
「うるせぇっていってんだよ」
顔面を捕まれ、そのままカウンターに叩きつけられる。店内に歯が折れる嫌な音が響いた。
「ぎゃあああああああああああああ!!!!」
泣きじゃくりながら銃のもとへ這いよる役人。男はそれに対して気にもかけず、勝手にカウンターから酒瓶をとりそのまま口にした
「こ、こほせ!ばやく殺ぜぇえええ!!」
銃の引き金がや っと引かれた
当然のように放った先に男はおらず、ひとりを蹴りとばし、彼もまた銃をぬいた。
黒く輝く、美しい2丁の拳銃だ
黒の銃は次々と放たれ、役人たちの掌ばかりを正確に射撃していく。役人の撃つ銃は男にかすることもなく、壁や机にめり込んでいった。
手のひらを撃ち抜かれ、そして外へと蹴り飛ばされる。そうしていくうちに、役人たちはみな外へと投げ出されていた
「な、なななな……」
「見かけ倒しだな。撃ち方は知ってても傷つけ方は知らないらしい」
「わ、笑ってられるのも今のうちだぞ!よそ者がぁ!おい、あいつを呼べ!」
あいつ。
その意味はだれにでもわかる。恐怖で萎縮する人のなかで、男はひとり笑った
「いいぜ。呼べよ、そのティナ持ち。日も落ちていい頃合いだ」
男は笑う。ニヤリと、口の端を歪めた恐怖を感じさせる顔で
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