月下に咲く薔薇 20.
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酷使し、当然相応の疲労が蓄積されたまま朝を迎えている。
陽光を遠ざけようと顔を背け目を閉じているスナイパーの姿は、クロウの身に突き刺さる鈍い痛感を与えた。
「ロックオン、ロックオン」
「大丈夫だ。すぐに良くなる」
小さな相棒に対し気丈に振る舞っては見せたが、その後も3分は同じ姿勢のまま息を整えていた。
真冬の日差しは弱いものの岬の突端という立地故、屋外に出た者は容赦なく海からの照り返しに晒される。日が高くなる程、バトルキャンプ全域は他の平野部分よりも光量が増すのだ。
城田がサングラスを持ち歩く理由もその辺りにあるのか、とクロウは改めて理解した。
「一旦戻るか?」ガンダムマイスターの背に手を当てるクロウに、「もう外なんだ。どっちに向かっても同じだろ」とダイグレンに立ち寄る決意を露わにする。
クロウは寒気を承知で、愛用の軍用コートを脱ぐとロックオンの頭にそっとかけた。丈の長いコートなので、頭どころかスナイパーの上半身をコートがすっぽりと覆う。
「気に入らないなら、ダイグレンで外してくれ。でも今は、掛けておいた方がいい」
「クロウ…」
彼の事だ、気遣いは面白くないのだろう。
が、太陽を拒絶し続ける仲間を見、言葉だけをかけて背を押す人間になれる自分ではない。強い口調で高圧的に攻める。
「いい仕事がしたいんだろ?」
無言のロックオンが、ようやく歩き始めた。不承不詳コート姿に納得し、滑走路のあちこちで慎重に動く人影を横に見ながら、まずトレミーに立ち寄る。
ハロを自室に戻した後、ロックオンは10分程自室で横になって目を閉じた。
その間、藤堂を捜して回りたい衝動がクロウの中で更に萎えてゆく。
急ぎたいのは山々だが、昨日から散々付き合ってくれた彼をこのまま残し1人で行動するなど余り強行したくはない。
そもそも藤堂は、クロウと同じバトルキャンプへの居残り組だ。特に何の工夫をせずとも数時間以内には会える筈、と考えを改める。
隻眼の男が起き上がった。
手にしたコートを差し出しかけ、クロウはやめる。今度こそ怒鳴られるかもしれないからだ。
まだ無理をしている印象はあるが、幾らか顔色の良くなったロックオンが首の仕種でダイグレンを指し示す。
「心配かけたな。行くぞ」
もう一度被せる事を諦め、クロウは2人で最も縦長な母艦に向かった。
「昨日から、これで3回目だろ。ダイグレン入りは」努めて明るくクロウは振る舞う。
昨日の午前は扇を捜していたロックオンが、今日はアテナと藤堂を捜しにダイグレンの中へと足を踏み入れる。残りの1回は、当然昨夜の一件絡みだ。
「大所帯なんだ、ZEXISは。どの艦ともしょっちゅう縁があるさ」
そこで2人は無言になった。唯一、敵の痕跡が残された母艦ダイグレン。しかも2人揃って、縁づけて
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