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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 20.
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方向を睨む。
 そこには、既知の男が1人立っていた。
 黒の騎士団に所属している藤堂だ。
 ゲッターチームの隼人を思わせる鍛え上げられた長身だが、彼の場合、厳格な組織を選んだ生き方を着続けている軍服で現している。無愛想な顔と長身は、ZEXISで剣の教えを請う者には厳しくも優しい。
 愛機は、千葉達四聖剣と同様、占領下の日本製KMF、月下。但し、4機を率いる指揮官機として頭部に赤い房状の飾りを付けている。
 藤堂はサロンに入室こそしたものの歩み寄る気配がなく、窓際のクロウ達3人をじっと見つめていた。傍観者には相応しからぬ熱い眼差しで。
 何故、アポロがあの男に鼻を向けたのか。1つの疑問が、クロウの中で全ての先に立った。
 踵を返し、藤堂がサロンを後にする。
 途端に、アポロの関心も失せた。
 背筋が粟立つ。一瞬とはいえ藤堂に対し示した少年の奇妙な行動が、クロウの神経をざらりとした手で撫で回す。
 まさか、藤堂にも敵からの贈り物が? そう考えずにはいられなかった。
 バラの花か。或いは体内に仕込むものか。いずれにしても、クロウに対するものと似た反応ならば相応の対応は必要だ。
 クロウと深く繋がっている異物は、現在2つ存在する。
 1つは、『揺れる天秤』とアイムやアサキムが呼ぶスフィアなるもの。そしてもう1つは、敵がクロウの体内に仕込んだ件の代物である。
 スフィア保持者の臭いをアポロがどのように受け止めているか。生憎と聞く機会には恵まれなかったが、少なくともアポロと出会ってから、クロウの臭いについて彼が関心を示した事は一度もなかった。
 アポロはZEUTHのオリジナル・メンバーで、かつて『悲しみの乙女』、『傷だらけの獅子』のスフィア保持者と共に戦っていたという。当然、スフィアに選ばれた者については、臭いの変化込みで体験済みという事になる。
 スフィアに対する反応と見るには無理があった。ならば、アイムが『残された者共』と呼ぶ何者かの痕跡と見た方が自然ではないか。
 何しろその敵は、何者にも察知されず自由にバトルキャンプを出入りできるのだから。
「なぁアポロ。今そこに、藤堂の旦那がいたろ。俺と同じ臭いでもしたか?」
 いつもより早口で、クロウは話題にのめり込む。
「ちょっと違うな。でも、似た臭いだ」痩身の少年が、改めてクロウに鼻を寄せる。「ああ。クロウの程、次元獣臭くねぇ。それに、もっともっと薄くて弱い。移り香みてぇだ」
 次元獣臭く。突き刺さる言葉にテンションを下げられつつも、今は大事と、自力でどうにか立て直す。
「その移り香。他の誰かから感じた事はあるか? 例えば、ミシェルやアテナとか。さっきここに沢山いただろ? あの中の誰かから感じたり、食堂や格納庫で昨日とか今日に嗅いだ事はないか?」
 テーブルに手をつき盛んにま
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