月下に咲く薔薇 20.
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緊張を強いられた会議からようやく解放され、クロウとロックオンはただ人である事を満喫する為にサーバーの無料コーヒーで一息ついた。
いつもより砂糖が少なめなのは、脳に回してやる量があれば十分という判断から。最前線のパイロットである事に感謝をしつつ、間引いた言葉を交わし合い指揮官達の困惑を反芻する。
つくづく、会議や交渉の場を主戦場にする人間にはなりたくないと考える。というより、全く以て自分には不向きだ。
フリーランスとして隊の多方面対応時には所属先を自由に選べる身分だが、それでもZEXISの一員。敵鎮圧の方針は上に決めて貰いたいというのが下が抱く本音だ。言葉の世界だの意志決定だのは、一パイロットの立場や欲する自由からは最も遠く、発砲とは別次元の重さがある。
湯気の立つこの1杯の飲み物を境に、己の世界へと戻る事ができる有り難さ。そんな小さな幸せに、クロウは感謝した。
「それじゃあ俺達は滑走路に行きます。まだまだ人手が要りそうだから」
レントンとエウレカは、2人揃ってそのまま屋外に向かった。怪植物片捜索に加わりたいと、休憩もせずに歩いて消える。
地味な作業に勤しむ勝平達ザンボット・チームの姿から、同年代として何かを感じ取ったのかもしれない。ニルヴァーシュの側に戻る事はせず、敢えてケンジの指揮下に入るつもりだ。
一方、ミシェルの足はそのままサロンに向かった。大山やミヅキがそこにいる、と踏んでの行動と思われる。
どのようなものであれ、何かの役割を担っている時間は辛いものが幾らか吹き飛ぶものだ。昨日の再現行動も、相当数のZEXISメンバーにかかる心的負担を軽減する事は間違いなかった。
「昨日の2人の行動か…」湯気の手前で、クロウは独りごちる。クランとは過ごしている時間が長かった為、彼女を中心にその行動を追跡してみる事にする。「最初からって言ったら、あれだよな」
「打ち合わせ前の2人か」と、ロックオンもコーヒー片手に回想に加わった。
朝、バラの花を持ったクランと遭遇したところから始め、会議が始まる前の混乱やロジャー達の飛び入り参加までをトレースする。
しかし、朝の段階で頓挫した。スメラギが求める抜けのない追跡行には程遠いものがある。
「まずい。絶対に何か見落としてるよな」
カップから口を離し、ロックオンが項垂れた。
休憩がてらにやるものではない、という事だ。
「行くか? 俺達も」
「ああ。ここで寛ぎながら考えるより、みんなの話を訊くが易し、だろ」
男の性分として、女性の言動をいちいち記憶に留めながら過ごしてはいない。ミシェルや青山の話を切っ掛けにできればと、クロウはロックオンと共にサロンに向かう。
会議室を出てから、優に20分は経っていた。
そろそろ対象になる全員に話が浸透した頃かと思いきや、既に大き
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