二十二話:Fate〈運命〉
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何かが音を立てて崩れ落ちていく。切嗣はその音を必死で無視しながら話し続ける。
殺したいほどに目の前の少女が憎い。だというのに、憧れを抱いてしまう。
どこまでも希望を、奇跡を追い求めて走り続けられる彼女が羨ましかった。
彼女の言葉はまるで本物の正義の味方みたいじゃないか。
薄汚れ、血塗れた偽物の正義の味方でしかない自分が酷くみすぼらしく見える。
「悲しいことを終わらせるために悲しいことをしたって、悲しみしか残らないよ!」
「ああ、そうだとも。悲しみは残る。だが、それでも終わることで少しはマシになる」
「最高の結果を目指そうよ! ―――夢は諦めなければ叶うんだからっ!」
かつて、はやてに言われた言葉を出されて切嗣の表情は完全に崩れる。
思わず頭を抑え血が出るほどに爪をたてる。
しかし、痛み程度では少女に崩された表情は戻らない。
そこに追い込みをかけるようにフェイトも話しかけてくる。
「あなたは本当にはやてのことをどうでもいいと思っていたの? 愛してなかったの?
はやてのことを―――人形だと思っていたの?」
まるで血液が沸騰したかのように憤りで体が熱くなる。
心が体を凌駕し始める。本当の気持ちを吐き出そうと蠢く。
それを何とか抑え込もうとするが続いたなのはの言葉で全てを壊される。
「あなたは、はやてちゃんに、家族に―――幸せになって欲しくないの?」
気づけば大きく腕を振るい、目の前にいた少女達を振り払っていた。
抗いきれぬ衝動が切嗣の体を襲う。心が体を食い破り、姿を現す。
全身から力が抜け、震えが走り、瞳からは枯れ果てたはずの涙が流れ出る。
その姿は感情を持つ者だけに許される姿―――絶望だった。
「……ふざけるな…ふざけるなッ! 馬鹿野郎ッ!!」
怒りと、悲しみと、絶望の籠った悲鳴が夜空にこだまする。
そのあまりにも痛々しすぎる姿に誰もが言葉を失う。
もはや、彼の言葉を止めることができる者は彼を入れても存在しなかった。
―――初めて、父と呼んでくれた時は涙が出るほどに嬉しかった。
―――毎日成長していく姿がこの上なく愛おしかった。
―――騎士達も父と呼んでくれてただ楽しかった。
―――本当の家族だとこの世の誰よりも思っていた。
―――娘と家族さえいれば世界なんてどうでもいいと思えるほどだった。
―――こんな結末を願ったわけじゃない。
「愛していた! 家族をッ! 世界で一番愛していたッ! 娘をッ!!」
紡がれる言葉は聞く者達の心を引き裂いていく。
同時になぜそこまで思っていながらこのようなことをしたのかと疑問を抱く。
しかし、その答えはすぐに彼の口から出さ
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